ハヤトの気持ち
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と、ハヤトが何かに気付いたかのように顔を上げます。そして急いで玄関へと足を運びます。
急に部屋から飛び出たハヤトに雲雀びっくりです。子供たちもびっくりです。今日は朝からハヤトは何も食べてないので多少ふらついていましたがそれでも走ります。
ハヤトは迷わず扉を開けると飛び込みました。そこに誰もいなかったら冷たい床に激突する所だったでしょう。
けれど扉の向こうには誰かがいて…突然出てきたハヤトに驚く事なく優しく抱きとめてくれました。その人こそ…
「リボーンさん!お帰りなさい!!!」
「ああ…戻ったぞ。ハヤト」
リボーンさんでした。ハヤトの旦那さまであり、子供たちのパパ。一家の大黒柱のリボーンさんです。
リボーンさんは飛び込んできたハヤトを抱きしめたまま我が家へと入ってきます。雲雀と子供たちが出迎えてくれました。
「あれ、お帰り。聞いてた帰国よりも随分と早いじゃない。…っていうかかなりお疲れみたいだけど」
「ツナの奴がな…いきなり仕事をキャンセルさせてしかもヘリを用意してて戻ってこいと言ってきやがってな。…おかげで予定が狂いっぱなしだ」
どうやらストライキを繰り出すハヤトにツナが暗躍したっぽいでした。リボーンさん災難です。けれど胸の中で幸せそうに寄り添ってくるハヤトを見てどうして文句を言うこと出来ましょう。
「…まぁ…お疲れ。ご飯にする?お風呂にする?それとも…」
雲雀。素で言ってのける辺り流石ですが、その台詞はハヤトのものです。
「………寝る」
素で反応を反す辺りリボーンさんも流石です。子供たちの頭を撫でながらリボーンさんは寝室へと足を運びました。
リボーンさんはハヤトを抱いたままベッドに崩れ落ちました。スーツを脱ぐ間も帽子を取る間もありません。
スーツを脱がせなければ皺になってしまいますがハヤトにそれが出来るだけの力はありません。
雲雀は子供たちの世話をしながらそのことが気になっていましたが夫婦の寝室にお邪魔するほど野暮でもありません。
ともあれ、ハヤトは時計を見ました。…23時50分。ぎりぎりです。でも嬉しいです。
「…リボーンさん、リボーンさん」
ハヤトが小さく声を掛けると、どうしたと目で訴えてきます。喋る気力はもうないみたいです。
「あのですね、あのですね!」
それでもハヤトは満面の笑みで。愛する旦那さまにお祝いの言葉を言うのでした。
「お誕生日、おめでとうございます!」
「―――」
ちょっとリボーンさん止まりました。
正直、リボーンさん本人は忘れてました。
けれど、これこそ。ハヤトが一日中うーうー呻きながらリボーンさんに会いたいと訴えていた理由だったのです。
「ハヤト…ハヤトはですね!リボーンさんに会えて本当に感謝してるんです!」
ハヤトの言葉は続きます。
「リボーンさんと初めて会ったとき…リボーンさんはハヤトを助けてくれましたね」
それは、本当に昔の話。
物置に閉じ込められ泣いていた、小さな女の子。その子を見つけたのが…リボーンさんでした。
「リボーンさんとまた会えてからも、ハヤトはリボーンさんに助けられっぱなしでした」
再開を果たしたのは、七年も経ってから。
お互いに最初は気付かなかった。ハヤトはリボーンの顔をよく覚えてなかったし、リボーンはまさかハヤトが自分を探しているなどとは夢にも思ってなかったから。
それに…7歳の小学生は14歳の中学生と変わっていて。とても分からなかった。
それから長い月日を共に過ごした。…アイドルと、マネージャーという関係で。
その関係が変わったのは…どれだけの歳月が流れてからだっただろうか。
想いを自覚して。行動に移したのは…いつだっただろうか。
「リボーンさん」
気が付くと、ハヤトが真っ直ぐに自分を見ていて。
「生まれてきてくれて、ありがとうございます」
本当に幸福そうに、微笑んでいて。
「ハヤトと出会ってくれて、ありがとうございます」
ぎゅっと。愛しい旦那さまに抱き付いて。
「リボーンさん」
自分の、心からの想いを―――
「だいすきです」
…告げた。
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