ハヤトの気持ち
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鐘が鳴る。鐘が鳴る。ぼーんぼーんと柱時計が日付の替わる合図を送っている。

ハヤトは言いたいことは言い終わったとばかりに沈黙して。その表情は満足げで。

嗚呼…出来ることなら今受けた言葉をそのまま返したいのに。疲れのせいか上手く口が動かない。それのなんと悔しいことか。

礼を言うべきはこちらの方なのに。…ハヤトには数え切れないほどの沢山の大切なものを与えられたというのに。


親も兄弟もいない自分に…初めて出来た、家族。


それまでの日々は…言ってしまえば仕事をするだけの、それだけの無機質で無彩色な物だった。

一人でいるのが当たり前だった。誰もいない部屋で過ごすのが日常だった。


それが…今となってはもう。考えられなくて。


今は毎日が楽しい。自分の頑張りがそのまま家族の為になっているようで。

今は帰るのが楽しみ。自分を待っててくれる彼女らがいるから。

…ああ、だと言うのに。それを伝えたいのに…目蓋は重く身体は動かず意識は今にも途切れそう。

仕方ない。謝辞は起きてから言うとして、今は体力回復に専念しよう。

リボーンは最後に感謝の意味を込めてハヤトの小さな身体を強く抱き締めると…そのまま深い眠りへと落ちていった。