四季を共に
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それから、ハヤトのいない日々が始まった。

心にぽっかりと穴が開いたような感覚を味わい続けた。


ハヤトがいない。

それだけで…オレの生活は味気のないものになった。

…まぁ、事実ハヤトが来るまでそういう生活をしてはいたのだが。


ハヤトがいない。

ハヤトの声が聞こえない。


一人でする食事。それのなんと不味いことか。

オレの料理の腕の問題ではない。…ハヤトが、いるかいないかだ。


ハヤトの席にハヤトがいない。

…素直に、寂しいと思った。


ハヤトがいない。

ハヤトがどこにもいない。


ふと道端に咲く花を見つけた。

ハヤトが「綺麗」だと微笑んでいた花だ。

ハヤトがそう言うまで、オレはその花の存在にすら気付かなかった。


ふと夜空を見上げた。

ハヤトはよく夜空を見上げて星を見ては、やはり「綺麗」だと微笑んでいた。

ハヤトがそう言うまで、オレは空など見上げたこともなかった。


「…綺麗だな」


ふとそう呟くが、答える声は訪れない。


ハヤトがいない。

ハヤトが隣にいない。


そのことが…こんなにもショックだとは、思わなかった。

屋敷に帰り、そこでまずハヤトの姿を探してしまい苦い笑いをこぼす。


いるはずがないのに。

あいつは今病院なのに。


ついさっきまで、あいつの無事を祈っていたというのに。

屋敷に帰ると、駄目だ。思わず探してしまう。


「ハヤト…」


思わず呟く声に、答える声はもちろんない。