四季を共に
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そして、それから暫くして…オレのところに知らせが来た。

ハヤトの治療が終わったから、引き取りに来てほしいと。


オレはハヤトを迎えに行った。


久々に見るハヤトに、オレはようやく安心を覚えた。

ハヤトは眠っていた。オレはハヤトを抱きかかえて帰る。

…ハヤトの記憶がどうなったのかは…聞く勇気がオレにはなかった。

結果が分からないままオレは屋敷に戻った。ハヤトを寝具に寝かせる。

ハヤトは暫くそのまま眠っていたが…やがて、その目を開かせる。ゆっくりと。

そしてその目が…オレを捕らえる。


「……………」


オレは拳を握り締め、ハヤトを見返す。

ハヤトの口が…開く。


「…リ………ボーン、さん……?」


ハヤトが小さく呟く。オレの名を。


「オレが…分かるのか?ハヤト」

「…?はい、リボーンさんです。ハヤトの命の恩人で、とっても親切で優しい方…実はチーズケーキとモンブランがだいすきで、照れ隠しに帽子を間深く被る癖があって、」

「そこまで言わないでいい」


ぺしん。オレはと軽くハヤトの額にチョップをして黙らせる。

そして内心…オレはほっと安堵の息を吐いていた。

覚えてる。

ハヤトが、オレのことを。


「…?リボーンさん、何か嬉しいことでもあったのです?」

「どうしてそう思うんだ?」

「…お顔にそう書いてあります」


そうか。そうかもな。


「ああ、飛び切り嬉しいことがあった」

「…それは、よかったですね」

「ああ。よかった」


本当に。

オレはハヤトの頭を撫でた。


「?…リボーンさん?」

「なんだ?」

「い、いえ…?」


ハヤトは自分の身に起こったことすら分かってないのか、釈然としない顔で…けれどされるがままだった。ハヤトは撫でられるのが好きだからな。


「…えへへ、リボーンさんがとってもお優しいんです」

「これからはもっと優しくしてやるさ」

「え?」

「使用人の体調管理も雇い主の仕事だからな」

「え…ええ?」

「なんだ、お前本当に何も覚えてないのか?お前は病気に掛かってて、ずっと目が覚めなかったんだぞ?」

「え…そうなのですか!?」

「ああ」


慌てて飛び起きようとするハヤトを制して、また寝かせる。


「あわわわわわ…き、今日は一体何日ですか!?どれほどのお時間が!?は…ハヤトは、ハヤトは!!きゅーきゅーきゅー!!」


ハヤトは余程ショックなのか取り乱していた。変な奇声上げたし。


「悪かったな。オレはお前の異変に全然気付かなかった。…雇い主失格だな」

「そ、そんなことありません!!ハヤトだって全然気付きませんでしたから!!」


マジか…


「まぁ、お前には負担を掛けっぱなしだったかもな。もう一人ぐらい誰か雇えばお前の負担も減るか?」

「えーーー!?だだだだダメですよそんなの!!!」


ハヤトのための立案だったのだが、他でもないハヤトに蹴られてしまった。