四季を共に
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「…駄目か?」

「ダメです!!ハヤト、お仕事するの全然苦じゃないです!!とっても楽しいんです!!」

「そうは言うが…」

「それに…知らない人は怖いですし…」


…そういえばそうだった。


「…お前も、他人にいい加減慣れろ。そもそもお前の治療をしたのは"知らない人"だぞ」

「えーーー!!」


ハヤトがショックを受けた。

ハヤトが目に大粒の涙を浮かべた。


「ふぇ…ふぇええええ……」


ハヤトが泣き出した。

自分の身体を抱きしめて震える。


「………そんなに嫌だったか?」

「だって、だって……」

「…でも、今お前がこうしてオレと話せるのはそのおかげなんだ。大目に見てくれ」

「………」


ハヤトが涙目でオレを見上げる。…そんなに嫌だったのか…


「あー…じゃああれだ。お前の言うこと、オレがなんでも一つ聞いてやるからそれで許せ」


オレのその言葉に、ハヤトがぴくりと反応する。


「なんでも…?本当ですか!?」

「あ?ああ…」


軽く言ってみたものの、ハヤトは一体なんて言ってくるつもりだ…?


「で、では…」


ハヤトが期待に満ちた目でオレを見ながら、


「は、ハヤトをぎゅーってしてください!!」

「……………。ぎゅう?」

「はい!ぎゅー!!です!!」

「………」


なんだ…ぎゅうって……


「だ、ダメですか…?」

「駄目というか…お前の言う意味がよく分からん。お前がオレにそのぎゅうとやらをしてみろ」

「きゅー!?」

「きゅーじゃなくてぎゅーだ」

「え、え、え…よろしいのですか!?」


そんな許可を取らないといけないようなことをさせるつもりなのか…


「…ああ。いいからやってみろ」

「きゅ…きゅ…では、失礼いたしまして…」


ハヤトがオレに近付く。

ハヤトがオレの首に腕を回し、身を寄せる。

そしてそのまま力を込めた。


「こ…これが!ぎゅー!!です!!」


ああ…なんだ、ぎゅーって、抱きしめるってことか。


「なんだ、そんなことでいいのか?高級料理を食わせろと言ったら食わせてやるし、服や宝石が欲しいと言えば買ってやるぞ?」

「そ、そんなのハヤトはいりません!!それよりリボーンさんにぎゅーしてほしいです!!」

「だが…」


オレがそう言うと、ハヤトはまた涙を浮かばせた。そしてオレから離れる。


「どうした?」

「きゅ…やっぱり、リボーンさん…ハヤトをぎゅってするの、ダメですか……?嫌…ですか?」

「いや、そういうわけじゃ、」

「分かって、ます…はい。リボーンさんの使用人であることだけでも恵まれた身なのに、更にぎゅーを要求するなんて…ハヤトはいけない子です。ハヤトは…とっても贅沢でわがままな子です…」

「いや、だから…」

「ごめんなさい…ごめんなさいリボーンさん…ハヤトのこと…嫌いになってしまわれましたか?こんなダメな子…要らないと思ってしまいましたか?ひっく、ごめんなさい、ごめんなさいリボーンさん…」

「…ああもう、」


オレは埒が明かないと悟り、ハヤトの腕を掴んだ。


「え?」


そしてそのままハヤトの身を寄せて…抱きしめる。