四季を共に
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「これで満足か?」
「あ…」
ハヤトが少し身を強張らせる。
けれどそれも一瞬のことで、ハヤトはすぐに力を抜いてオレに身を任せてきた。
「…はい。ありがとう、ございます……リボーンさん」
ハヤトはとても幸せそうに、そう呟いた。
「…やっぱり使用人を新しく雇うかな…」
「きゅ!?」
オレの呟きに、ハヤトがすぐさま反応した。
「ですからそれはダメです!!」
「オレの話も聞けよ」
「…きゅ?」
「なぁ、ハヤト」
「はい」
「お前がいない日々は、オレにとってとても辛いものだった」
「う…ごめんなさい」
「別にお前を責めているわけじゃない。ただ…今後お前が、たとえば外の世界に興味を持ってここから出たがるかもしれない」
「そんなこと有り得ません!!」
「だといいんだけどな。けど、仮にそうなった場合…オレはお前を手放せないかもしれない」
「…?」
「お前を閉じ込めてでも、オレの傍に置きたいと思うかもしれないってことだ」
ああ、くそ。ツナがオレのこと変態だとか言っていたが、これじゃ否定出来んな。
「だから、出て行くなら今だ。今なら恐らく…オレは自分を押さえつけられると思う。ある程度の資金も持たせてやるし、何なら信用出来る人間を紹介してもいい」
「………」
ハヤトが真っ直ぐにオレを見ている…けど、すぐにまた笑顔に戻った。
「リボーンさんにそこまで思ってもらえるなんて、光栄です!!」
「馬鹿。これは冗談なんかじゃないんだぞ」
「だったらなおさら嬉しいです!!」
「………」
こいつ…正真正銘の馬鹿だな。
「しかしご安心くださいリボーンさん!!」
「ん?」
「ハヤトはお外はとっても怖いです!!ハヤトはリボーンさんのお傍がとっても安心出来ます!!リボーンさんがいてくださればお外も平気ですが、ひとりではとっても怖いです!!知らない方も怖いです!!ですからハヤトはここから出たくありません!!」
「…オレがお前にぞっこんじゃなければ、ここから叩き出してやりたくなる台詞だな。それ」
「きゅ!?…って、ぞっこん!?」
…しまった。うっかり言ってしまった。
「あー…まぁ、お前を手放せないってのはつまりそういうことだ」
「きゅ…?」
「お前がいなくなって初めて気付いた。オレにとってお前は、なくてはならない…とても重要な奴なんだ」
ハヤトの顔が一呼吸置いて、赤くなった。
「ぞ、ぞっこんとか手放せないとかなくてはならないとか…そ、それはとても誤解を生みやすい表現ですリボーンさん!!」
「誤解じゃない。…こう言えば分かるか?ハヤト。好きだ」
ハヤトの顔が更に赤くなった。体温に至ってはかなり上がってる。
「す―――」
「まぁ、これはオレの個人的な感情で、なんだ…使用人と主の立場を使ってよからぬことをするつもりはないからそこだけは安心しろ」
「むしろしてください!!」
「なんでだよ!!!」
「き、きゅー!!ではなくてではなくて!!あの、あのあの、ハヤトも…ハヤトだって……!!」
「ん?」
「ハヤトも…ハヤトだってリボーンさんが…でも、リボーンさんはハヤトの命の恩人で、雇い主さんでそれだけで神様みたいな方なのに、なのに恋だなんてしちゃいけないって、好きになっちゃいけないって…思ってたの、に…っ」
「ハヤト…」
「冗談じゃ…ないですよね?本当…ですよね?ああ、でも冗談でもいいです…ハヤトは冗談でもとても幸せに…身に余るほどの幸せを教授することが出来ました…ハヤトはとても幸せです…」
「…馬鹿。何勝手に自己完結してるんだ。つか誰がこんなこと冗談で言うか」
「え…じ、じゃあ…」
「オレは本当にお前が好きだ。…何度も言わせるな」
「リボーン、さ…」
ハヤトがまた泣いた。
あたたかな涙を流しながら、オレの胸の中で。
オレはハヤトを抱きしめ返した。
もう二度と手放せない、大事な人を抱きしめ返した。
++++++++++
これからは、お前と共に歩んでいこう。
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