四季を共に
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少女はオレの知り合いの医者に診せた。結果は衰弱しているが命に別状はないとのこと。怪我も大したことはなかった。

暖かいところで安静にさせて、起きたらスープでも飲ませてやればそれでいいと言われ、その通りにした。空き室の暖炉に火を焚いて、寝具に寝かせる。

暫くして、少女は起きた。自分がどのような状況下にいるのか分からないらしく、寝たままで顔を動かして辺りを見ていた。そしてその目が、オレを捕らえた。


「起きたか?」

「あなたは……」


言って、少女は身を起こそうとした。…が、まだ体力が回復し切れてないのか途中で腕が折れ、再びシーツに沈んだ。


「…まだ寝ていろ」

「はい…」


小さくそう呟いて、少女はまた眠りについた。次に起きたのは、翌日だった。

身を起こせるぐらいには回復したらしい。彼女にスープを渡した。

次いで、彼女は自分の有様にようやっと気付いた。ボロボロの衣服。オレは少女にシャツとズボンを渡した。オレの昔の服だ。オレが女物の衣類など持ってるわけがないからな。

彼女はそのことに感激でもしたのか、何度も何度もオレに礼を言った。それはオレが「もういい」と言うまで続いた。


「…ありがとうございます、親切な方」

「だから…もういいって」

「でも、それではハヤトの気が済みません!!でも、何故こんなにハヤトに親切にしてくださるのですか?ハヤトはお金など持ってはいませんよ?」

「なに言ってるんだ」

「え?」

「お前が昨日、オレに「助けて」って言ったんじゃないか」

「え…えぇ!?」

「覚えてないのか?」

「それは、覚えてます…けど、でもたったそれだけで!?」

「悪いか?」

「………」


少女は暫く呆然とした表情を作った。そして、深く深く頭を下げた。


「あの、ハヤトに出来ること…なんでも言ってください!!なんでもします!!」

「なんでもって…そうだな、じゃあ事情でも聞かせてもらおうか。どうしてあそこで倒れていたんだ?」

「はい、それは……………」


少女の動きがそこで止まった。


「……………」


…なんだ?

少女は暫く頭を捻ったり額に手をやったりして唸り考え込んでいた。

そして、


「…分かりません…」


と、力なく答えた。


「…分からない?」

「はい、分かりません…思い出せません……」

「思い出せないって…」

「昨日、あなたにお会いしたことは覚えています。倒れるハヤトの前にあなたが来て…ハヤトは手を伸ばして」

「何も覚えてないのに、オレに助けを求めたのか?」


「―――怖かったんです」


「怖かった?」

「はい。覚えているのは、それだけです。とても怖いところから…ハヤトは逃げてきました。覚えているのは、たったそれだけなんです…自分の名前すらも、覚えていません」

「………とりあえず、名前はハヤトだろう」

「えええ!?そうなんですか!?なんで分かるんですか!?」

「お前がさっきからそう言ってる」

「え…えええ!?あ!本当です!!すごいです!!あっという間にハヤトの名前が分かっちゃいました!!」


あとお前が馬鹿だということも分かったな。

オレは一つため息を吐いた。