四季を共に
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翌朝…いくら待ってもハヤトは起きださなかった。

身体を揺すってみるも、何の反応もしない。呼吸はしている。体温もある。が…それだけだった。

これはオレの手ではどうにもならないと悟り…オレは初めてハヤトと会ったときにもハヤトを診てもらった医者のところへと連れて行った。

ハヤトの容態は軽いものであると…信じて。

そして、ハヤトを医者に診せた結果…


ハヤトは、病に掛かっているのだと告げられた。


そしてそれは、ここではない…もっと大きな病院でなければ治療することが出来ないとも告げられた。

医者はすぐに手続きをしてくれた。


だが…


医師はオレに告げた。

ハヤトは無事に助かる。


ただし。


…5割の確立で、ハヤトは記憶を失って帰ってくるだろう。と。

病魔が、ハヤトのどこを患わせているのか。それが問題だった。ここの施設ではそこまでは分からないらしい。

その箇所によっては、治療の副作用でハヤトは………これまでの記憶を失うのだと、告げられた。


オレは………それの同意書にサインをした。


…勘違いしないでほしいが、オレは決してハヤトの記憶がなくなってもいいとは思っていない。たった一年にすら満たない思い出だが、消えていいわけがない。

ただ同意書にサインせず、このままハヤトを連れて帰っても…意味などないのだ。オレの手ではどうにもならない。むしろここで手を打たなくてはもっと悪化する恐れすらある。


…オレは知っている。

ハヤトは強い奴だ。

だから信じている。


あいつが…ハヤトが、無事に帰ってくると。…あの屋敷で共に過ごした記憶を持ったまま、帰ってくると。

ハヤトはすぐに病院へと搬送された。その病院は遠く、とても見舞いにいけるようなところではなかった。…どっちにしろ、ハヤトは面会禁止だと言われたが。

オレは医者にハヤトを任せ、帰路に着いた。

冬の風が容赦なくオレに吹き付ける。

…今年は暖冬だと、誰かがそう言っていた。

嘘だな。

だってオレの身体は、あの日ハヤトを見つけた寒い冬の日よりももっと―――冷たくなっている。