主人公の苦悩
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あ…の、10代目、すいません……」
「ん?」
事の始まりは、そう…まだオレが彼等と出会ってまだ間もない頃。
自称右腕の彼が悪い人ではないのだと分かり始めた頃。
「その…10代目にこんなことを頼むのは大変心苦しいことなんですけど…」
「…?うん」
「その…これを、リボーンさんに渡してはくださいませんか…?」
と、獄寺くんが差し出したのは書類のような紙の束だった。
「本当はオレが頼まれたことなのでオレからリボーンさんに渡すのが筋だとは分かってるんですけど、その…」
「ああ、いいよいいよ。リボーン怖いもんね」
知り合ってばかりだったけど、リボーンの怖さは身に染みて分かっていた。
だから獄寺くんもリボーンが怖いのだろうと、そう思った。
「すいません…オレ……」
「いいんだって」
"10代目"として見られ、変な対応されるよりもこうして頼み事をされた方がよっぽど心地よかった。
むしろ、獄寺くんでも怖いものがあるんだと親近感が湧いたりして。
…そうだ。
今。
今思えばこそ。
「困ってる時はお互い様だし、」
いくら常日頃から使い走りに遭ってる身で、雑務に慣れてるとはいえ。
身に纏う空気の違う彼が、それでもオレと同じ人間なんだと分かったことが嬉しかったとはいえ。
「これからもどんどん頼っていいよ」
そんなことを言ってしまったのがそもそもの間違いだったんだ。
もしオレが、この場に戻れて、自分に一言だけ言えるならこう伝えよう。
「いいから放っとけ」と。
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