暗い道、森の中。獣道、森の奥
1ページ/全3ページ


森の中。

広い、一本の道が広がっていた。

辺りにはうっすらと霧が掛かっている。


…薄暗い。


それに、肌寒い。

ここはどこだろうか。

どうして、自分はこんなところにいるんだったか―――


「おい」

「うわ!」


不意に背から声を掛けられ大声を出してしまった。

慌てて背後を振り向けば、呆れ顔をしたあなたがいた。


「こんな道の真ん中で何呆けてんだ?」

「…いえ、あの……」


上手く言葉が紡げない。

自分でも把握してない現状と、突然のあなたの登場で。

あなたはため息を一つ吐き、オレを見る。オレと眼が合う。


「今暇か?」

「え…」


今。暇か。時間があるか、オレの時間をあなたの為に使う事が出来るか。それは、それはもちろん―――


「暇です」

「そうか。なら付き合え」


あなたがオレを追い越し道を進む。オレは一歩遅れてあなたに着いて行く。

―――どこか遠くで、獣の鳴き声が聞こえた。


あなたは舗装された道を外れ、森の奥へと入って行った。

一気に霧が濃くなる。

温度が下がる。

木々で太陽が隠れたのか、視界さえ暗くなる。

その事にあなたは気付いているのか、はたまた気付いたうえで無視しているのか。(可能性として高いのはそっちだ)

あなたはずんずんと進み、オレは置いて行かれないよう早足で着いて行く。


見失ったら、分かる道に戻るまで苦労しそうだ。


なんてことを思っていたら、広場に着いた。

霧が晴れる。

光が差し込み、明るく、温かくなる。

オレが辺りを見渡す間、あなたは真っ直ぐにベンチまで進み、座る。オレも遅れて進み、隣に座る。

…付き合えと言われたけれど、どうやら何か用事があるというわけではないらしい。

あなたは深く息を吐く。…疲れているのだろうか。


……………。

ええと…確か……


「リボーンさん」

「ん?」

「よろしければ、これをどうぞ」


オレはポケットから缶コーヒーを取り出す。

あなたに差し出す。


「ああ、悪いな」

「いいえ」


あなたがオレの手からコーヒーを受け取る。

あなたはどこか遠くを見ながらコーヒーを飲む。


…どこを見ているのだろう。


目線の先を追ってみても、特に目立つものは見当たらない。

何かを待っているのだろうか。


「リボーンさんは、ここで何をしているんですか?」

「ああ、まあ……ちょいと待ち人がいてな」

「恋人ですか?」

「肉食系のな」


姉貴だろうか。

しかしなるほど、待ち合わせの時間に早く着き過ぎたのか。

その時間を潰すのにオレが丁度よかったと。

それは別にいいのだが…


はて。


しかしリボーンさん、恋人を待つという雰囲気でもないような。

どちらかというと……


……………。


ああ、でも相手が姉貴か。待ち受けるのはあの毒か。なるほど。

そう思い、オレは納得する。


時間が過ぎる―――