暗い道、森の中。獣道、森の奥
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夕方になった。
どれだけ早く来たんだ、この方は。
明日のピクニックが待ちきれない子供か。
それとも覚悟を決めるだけの時間が必要だったのか。
オレはちらりと横のリボーンさんを見る。
リボーンさんは眼を瞑り、静かに寝息を立てていた。
寝とるし。
大丈夫だろうか。
待ち合わせの時間は過ぎてないだろうか。
相手が姉貴だったら切れてるの確定だと思うのだが。
それともあえて怒らせる作戦だろうか。
いや、でもリボーンさんは女子供には優しいしな……
ううむ…
起こした方がいいだろうか。
などと考えていると、
「何見てんだ?」
と、リボーンさんの声。
見返してみれば、リボーンさんの目蓋が開き黒い眼がオレを見ていた。
「どうした?」
「いえ…」
どうしたも何も、待ち人は。
まさか忘れているのだろうか。
言った方がいいだろうか。
などと思っていると、
「―――――……」
リボーンさんが何かに気付いたかのように視線を変え、何かに目を向けた。
静かに眼を細め、何かを見据えている。
何を見ているのだろう。
視線の先を探ってみるも、オレには何も見つけられない。
どこかで、獣の鳴き声が聞こえる―――――
「獄寺」
リボーンさんがオレを呼ぶ。
オレが反応するよりも前に、オレの手に空の缶コーヒーが乗せられる。
「美味かった。ありがとうな」
「いえ…」
リボーンさんが立ち上がる。
「時間だ」
覚えていたのか。
というかまだ過ぎてなかったのか。
リボーンさんが立ち上がる。
歩き進む。
その背中が小さくなる。
オレはその姿を見送る。
………。
………リボーンさん、
今日は、珍しく、鮮やかなシャツを着ていたな。
真紅の、赤いシャツ。
どこか、すぐ近くで、獣の臭いがする。
リボーンさんの姿を見る。
視界にノイズが走る。
霧が濃くなり、
辺りは暗くなり、
急に肌寒くなって、
気付いた時、オレは森の中にいた。
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