暗い道、森の中。獣道、森の奥
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森の中。
広い、一本の道が広がっていた。
雨が降っている。
大粒の雨が、オレの全身を打ち付ける。
…薄暗い。
それに、肌寒い。
ここはどこだろうか。
どうして、自分はこんなところにいるんだったか。
微かに、血の臭いがする。
こんな雨の中、森の中。辺りの臭いに掻き消されてもおかしくはないのに、何故だか分かった。
歩き出す。
見えない目印を辿るように。
進む先、道の先。見えてきたのは一本の橋、その向こうに一軒の家。
そして、その橋の手前、倒れているあなた。
地面には、雨に流され薄くなった、赤い滴。
あなたが死んでいる。
駆け寄り、傷口を見る。
何かに喰い千切れられている。
黒いスーツの中のシャツが、元々の色なのかあなたの血なのかも分からない程赤い。
肉食系の待ち人。そう言って何かを待っていたあなたを思い出した。
何かを待っている間、あなたが纏っていた空気。
恋人というよりも、処刑の時間を待っているかのような。
眠り、起きた後。何かを見つけたあなた。
オレには見えなかった。だけどあなたは確かに何かを見ていた。
今も、何も見えない。
オレには何も見えない。
ただ、何もない所から、赤い滴が落ちているのは分かる。
屈み、リボーンさんを見るすぐ横。
何もない空間から、―――まるで見えない"何か"がいるかのように、見えない"何か"の口元から―――誰かの血が滴っている。
すぐ近く、すぐ横から、獣の臭いがする。
すぐ隣から、獣の鳴き声が聞こえた。
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オレに見えないそいつは、オレを無視して、どこかへ行ってしまった。
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