くしゃみ
2ページ/全3ページ
「………」
「………」
「リボーンさん…」
「い、いや違う。今のは違うぞ獄寺。今のは風のせいだ」
という傍からまた可愛らしいくしゃみ。
獄寺はリボーンに近付いた。
「失礼します」
「ごく―――」
リボーンの言葉を無視し、獄寺はリボーンの額に自分の額をくっつける。
「―――!?」
驚いたのはリボーンだ。
いつも奥手で、自分が何を言ってもなびかないあの獄寺がこんなに近くに。
顔が近い。少しでも自分が動けば口付けが出来そうな程に。
自覚すると同時、リボーンの頬が赤く染まる。汗を掻き、体温が上昇するのが分かる。
「熱があるじゃないですかリボーンさん!」
「い、いや獄寺。それはアルコ風邪のせいじゃなくて―――」
お前のせいだ。
そう言う暇すら与えられず、リボーンは獄寺に抱えられ自室に運ばれた。
(あの獄寺が姫抱っこだと……)
リボーンは戦慄していた。戦慄が収まらないまま上着を剥がされ、ベッドにダイブさせられた。
「だ、大胆だな獄寺」
「何を仰ってるんですか。そんなことより、何か欲しいものとかありますか? 看病しますよオレ」
剥がしたスーツをハンガーに掛けながら獄寺が言う。
「いやだから看病は意味ないしそもそも寝る程の具合では…」
またくしゃみ。
ついでに寒気も自覚し、どうやら自分にもアルコ風邪か来たとようやくリボーンも思う。
そんなリボーンの手を握る獄寺。
「…意味は無いかもしれませんが、それでも放っておけないんです」
「獄寺…」
「それに、なら看病じゃなくて護衛をしますよ。アルコ風邪を知ってリボーンさんの命を狙う不届き者が現れないとも限りませんし」
それは確かに大いに有りうる。
「だが…いいのか?」
「いいんです。やらせて下さい」
獄寺の声が何だか遠い。
うつらうつらと、視界が舟を漕いでるかのように映る。
どうやら自分も最期のときのようだ、言葉を話せるのは次で終わりだろう。
「獄寺―――」
リボーンは最期の力を振り絞り、獄寺に言葉を紡いだ。
次
前
戻