無害な吸血鬼
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リボーンさんの城はとある街の外れにある。

少し歩けばにぎやかな街中に着くのだ。緩やかな坂を進んでく。

少し横を向けば海が見える。いつ見ても綺麗だ。オレは海を見るのが好きだった。

穏やかに気持ちになりながら、オレは街につく。買い物だ。金はリボーンさんが好きに使えと言った金庫の中にある分を。

街中ではオレはフードを目深く被る。オレの髪と目の色は珍しい。らしい。一度何も被らず街に出て変な目でじろじろ見られた。そのことをリボーンさんに話すと、リボーンさんはどこからともなくこのフードつきの服を持ってきてくれたのだ。ああ、なんてお優しいリボーンさん。

食材、日用品。必要最低限のものだけを買っていく。好きにしていいと言われてもこれはリボーンさんの金だ。無駄遣いは出来ない。

帰り道、人がにぎわう道の真ん中、誰かにぶつかった。

思わずよろける。転ぶことは避けられたが、荷物から買ったばかりの果物が落ちてしまった。

慌てて拾おうとしたが、それより前に誰かの手が果物を拾い上げる。オレに差し出す。


「大丈夫ですか?」

「あ…ありがとう」


見かけぬ顔だった。物腰穏やかな男だ。


「………」


男がじっとオレを見る。なんだ?

よくわからなかったが、オレは早々とその場を去ることにした。街中は落ち着かない。城の中が好きだ。オレは。


「………」


背後から視線を感じたが、気にせず立ち去った。