無害な吸血鬼
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城に帰ると、入口から雲雀が現れた。オレの眉間に皺が寄る。
「お帰り」
「まだいたのか。お前」
「ご挨拶だね」
「いつ帰るんだ?」
「これ、キミが育ててるの?」
雲雀はオレの質問には答えない。庭にある植木バチを指差して聞いてくる。
「…ああ、そうだ」
以前、リボーンさんが服に種を着けて帰ってきたことがあった。そのときのだ。
「今度はオレの質問に答えろよ。いつ帰るんだ?」
「リボーンを咬み殺したら」
こいつは…
苛立ちながら雲雀を見る。見れば、雲雀もオレを見ていた。
「…なんだよ」
「リボーンから聞いたんだけど、キミの血、極上なんだって?」
「らしいな」
「ちょっと飲ませてよ」
「誰が」
オレの血は、身体は。リボーンさんのものだ。他の誰のものでもない。
背を向けるオレを雲雀が追いかける。
「本当に美味しいかどうか確かめてあげる」
「大きなお世話だ」
「リボーンはキミの血しか吸ってないらしいじゃない」
「そうだな」
光栄だ。
「キミの血の味しか知らなくて、どうしてうまいと言えるんだろうね。比べる対象がないのに」
「知るか」
「もしかして、本当は不味いんじゃない?」
むか。
「リボーンさんが嘘をついているってのか?」
「いいや。そうは思わない。そうじゃなくて、だから彼は知らないのさ。キミ以外の血の味を」
オレ以外の味を知らないから。
だからうまいも不味いもわからないと。そう言いたいのか。
「だから僕が評価してあげるよ」
大きなお世話だ。
さっさと城の中に入ろうとするオレの首筋に、ひんやりとしたものが触れる。
雲雀の棒だ。確かトンファーという武器らしい。
トンファーから刺のようなものが生えた。
「キミの意見は聞かないよ」
ああ、もう。最悪だ。
刺はオレの皮膚を破る。皮膚から血が吹き出す。
それを口にした雲雀は驚いた顔をした。
「嘘」
何が。
「本当に極上」
ああそうかよ。
早く城の中に入ろう。傷の手当てをしよう。そう思うが雲雀がオレを捕まえる。
「なに」
用はもう済んだだろ。
「キミの血。全部頂戴」
やれるか。
って、こいつ。なんか様子がおかしい。目がなんか、どっか行ってる。どうしたものか。
雲雀が迫ってくる。
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