無害な吸血鬼
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目を開けると、見慣れた天井があった。

思考が停止する。

目を瞑る前との景色が違いすぎる。確か、さっきまでオレは、外にいたはずなんだが。


「気が付かれましたか」


声がした。見ればそこには人がいた。ええと、確か、そう、骸だ。


「勝手にお邪魔してすみません。でもあなたを手当てしなくてはなりませんでしたし、雲雀くんがまた来るかもしれませんでしたし」


聞きながら、オレは首筋に手をやる。何かが巻かれていた。包帯だろう。


「あいつは雲雀という恐ろしい吸血鬼です。今まで何人の人間が犠牲になったかわかりません」


でもあなたを救えてよかった。と骸はほっと息をついた。


「ところでおうちの方はどこですか?まさか独り暮らしというわけではありませんよね?」


おうちの方。つまり親という奴か。


「…親は、いない」

「おや…では保護者の方は?」


保護者…リボーンさんにあたるだろうか。

しかし、さて、どうしたものか。助けてもらったとはいえ、こいつとリボーンさんを鉢合わせさせるわけにはいかないだろう。

どうにか帰らせないとな。

まぁ、まだリボーンさんが帰ってくるまで大分時間があるだろうし―――


「もう随分と遅い時間ですけど、いつもこんな時間なんですか?」

「え?」


思わず間抜けな声が出た。慌てて起き上がり窓の外を見れば、星空が窓からこんにちはしてた。月の傾きから見て、いつものオレがとっくに寝ている時間に思えた。

これは。もしかしてヤバい状況なのではなかろうか。

しかも。更に気付いた。ここはオレの部屋ではない。リボーンさんの部屋だ。

慌ててベッドから降りようとするも、骸に押さえつけられる。


「ああ、まだ寝てなくては駄目ですよ」


ここにいる方がもっと駄目だ。ああ、早くシーツを替えないと。あとこいつを早く追い出さないと。

問題は山積みだった。しかも時間もない。頭を抱えたくなる。


「途方に暮れたような顔をして、どうしましたか?」


お前のせいだよ。

そう言ってやりたいのをぐっと堪える。言っても多分、ややこしいことにしかならない。


その時だった。

風に乗って、覚えのある香りがやってきた。落ち着く匂い。リボーンさんだ。

ヤバい。どうしよう。


「…骸。悪いが部屋を…」


移動しよう。そう言おうとしたとき、扉が開いた。現れたのは当然リボーンさんだ。

お早いお帰りで。そんなところも素敵です。