無害な吸血鬼
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目を、開ける。


「………」


なんだ今の。

ううむ、と頭を捻る。確か、こういう現象をなんとかと言うんだ。なんだったか。

…ああそう、そうだ、夢だ。

そうか今のが夢という奴か。初めて見た。

…というか、それはそれとしてだ。


「…ここはどこだ……」


見慣れぬ景色に戸惑う。オレは確かリボーンさんの城にいたはずなんだが。ああ、しかもだ。しかもオレはこともあろうにリボーンさんの部屋にいた。それが今や見知らぬ部屋である。なんの心当たりもない。

それで、どうなったんだっけ?記憶を探る。

骸に腹を貫かれたのを思い出した。

腹に手をやると、包帯が巻かれていた。…なんか気を失う度に包帯巻かれてないか?オレ。次はミイラになるかもしれない。

…あれから、どうなったのだろうか。

リボーンさんは無事だろうか。いや、無事だ。無事に決まっている。…無事だよな?

少しだけ不安になったところで部屋のドアが開いた。そこからリボーンさんが出てきた。


「リボーンさん!無事だったんですね!!」

「ああ。起きたか、獄寺」


リボーンさんの声がじんわりと脳内に入り込む。身体に浸透する。幸せを感じる。ああ、生きるって、きっとこういうことだ。


「目が覚めたのかね?」


急に第三者が現れてオレは驚いた。リボーンさんの後ろから見知らぬ人が出てきた。柔和な顔をした老人だ。


「目が覚めてよかった。もう三日も寝ていたんだよ」

「え…」


三日!?

そんなに寝ていたのかオレは。驚いた。


「…あの、」

「ん?」

「あなたは…?それにここは…」

「私は9代目。そしてここは私の屋敷だよ。獄寺くん」


名前を呼ばれる。なんだかむず痒い。

オレはむず痒さから逃れるために質問する。


「ええと、骸はどうしたんですか?」

「追い払った」


流石ですリボーンさん。


「ここはどこですか?」

「私の家だよ」


リボーンさんでなく9代目が答えた。


「どうしてここまで?」

「城にある道具だけでは、お前の手当てができなかった。だから設備の整っているここにきた」

「なんだ、私を頼りにしてではないのかね」


9代目がリボーンさんを小突き、笑う。


「…お二人はどのようなご関係で?」

「友人、かな。そうだろう?リボーン」

「オレたちは友人だったのか?」


リボーンさんが真面目な顔で言って、9代目はまた笑った。


「しばらくはここにいなさい。また襲われては敵わんだろう」

「あ…ありがとうございます。…あの……」

「うん?」

「9代目は…リボーンさんのことを……」

「ん?ああ、知っとるよ。リボーンは吸血鬼だね。そしてキミも」


オレも。そうか。そうだったのか。


「9代目も吸血鬼なんですか?」

「いや、私は人間だよ。しかし人間も吸血鬼も関係ない。心が通じ会えば仲良くなれると私は信じておるよ」

「………」


こんな人間もいるのか…

吸血鬼は人間に嫌われていると思い込んでいたオレは何故だか安心していた。

その横ではリボーンさんが9代目に、


「オレたちはいつ心が通じ会ったんだ?」


と問いかけ、9代目はまた笑った。