無害な吸血鬼
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リボーンさんはいつもよりも早く帰ってきた。いつもなら睡魔にあえなく敗れているオレだが、今日は起きれていた。頭の中では思いっきり船を漕いでいたが。
綱吉さんがリボーンさんのところに行こうとする。オレも着いていく。
「待ってください綱吉さん…」
「獄寺くんは寝ていたら?」
「いえいえオレの問題ですから…」
目を擦りながらそう言うオレに、綱吉さんは苦笑した。
「わかったよ。一緒に行こう、獄寺くん」
「もちろんです…」
「でも、その前に顔洗ってこようか」
綱吉さんのアドバイスを受け、オレは顔を洗い意識をシャキッとさせた。
よし、これで大丈夫だ。
綱吉さんと二人、リボーンさんのところまで赴く。
リボーンさんはリビングにいた。ソファーに腰かけていた。
リボーンさんがオレたちに気付く。視線を向けてくる。
「お…お帰りなさい、リボーン、さん…」
胸をときめかせながらそう言えば、リボーンさんは「ああ、ただいま」と言ってくれる。
くうぅ、生きててよかった!!
嬉しさのあまりに顔がにやける。胸の中が暖かくなる。きっとこれが、幸せという奴だ。
オレが幸せを噛み締めていると、綱吉さんが一歩前に踏み出した。
「リボーン、さん」
「リボーンでいい」
リボーンさんにそう言われ、綱吉さんは一瞬言葉を呑み言い直す。
「…そう。じゃあ、リボーン。聞きたいことが…」
「獄寺とは五年前に会った」
綱吉さんが台詞をいい終える前に、リボーンさんは答えを返した。オレの感想は、ああ、やっぱりそうなんですか。程度だ。それより今日もよく話されますね!!胸きゅんです!!の割合の方が大きい。
「………っ」
リボーンさんの言葉に綱吉さんは怯む。しかし次なる質問をしようとし、そして今度は言葉が発せられるよりも前にリボーンさんが答えを言う。
「オレが歩いていると、倒れている馬車を見つけた。中には死体が三つ。生きているのは獄寺だけで、獄寺もまた死にかけていた」
ほら見たことか。オレは自慢したくなった。ほら、リボーンさんは誰も襲ってなんかいなかった!
綱吉さんはもう何も言わない。ただ黙ってリボーンさんを睨み付けてるだけだ。リボーンさんは綱吉さんの目を見ながら言う。
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