無害な吸血鬼
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城までの道のりを歩く。

こんなにも重い足取りは初めてだ。

まったく、骸の奴も、嫌な日に綱吉さんをさらってくれたものだ。

とはいえ今日気分が悪いと言ったところで「それは大変ですね。では今日のところは彼は返してまた後日さらうことにします。ではお大事に」などと言うわけがない。まぁ、誰も言わないか。ああ、いや、リボーンさんなら言うかも知れない。いや、リボーンさんはまずさらわないけど。

リボーンさんのことを思い出して、ふっと笑みがこぼれる。気分が少しだけ軽くなる。


ああ、リボーンさん、リボーンさん、リボーンさん。


思い返すだけで穏やかな気持ちになる。しかしその反面、オレの額からは汗がこぼれ腹の鈍痛は酷くなる。

骸にやられた傷でも開いたか、と思うがあの傷はとっくに癒えたはずだ。しかし痛みは収まらない。

ふと横を向けば、海があった。オレが見たいと言った海。


…何も感じない。


きれい、だとは思うがそれだけだ。

その理由を、今のオレは知っている。


ごめんなさい、リボーンさん。


あのとき、オレはあなたに海が見たいと言ったけど。

本当は、オレ、海なんてどうでもよかったんです。

あの言葉には……別の意味が、あったんです。