無害な吸血鬼
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城の前にたどり着く。

主のいない城。招かざる客がいる城。綱吉さんが捕らわれている城。オレの向かう場所。

ここに綱吉さんがいる。あと骸。

止めていた足を踏み出そうとする。

するとそこに声がかけられた。


「行かない方がいいよ」


振り替えれば、そこには雲雀がいた。


「あぁ?」

「城に骸がいる。行ったら殺されるよ。弱者は弱者なりに身の程をわきまえなよ」

「綱吉さんを見捨てろってのか」

「それが誰だか知らないけど、そいつのために命捨てるの?」

「綱吉さんはオレの友達らしい」

「覚えてないじゃない」

「それにリボーンさんがお世話になってる人のお孫さんだ」

「リボーン?世話?なに?リボーンが人間に世話になってるの?」

「そうらしい」

「なんの世話さ」

「知らん」


無駄話をしている暇はない。オレは雲雀を睨む。


「オレはもう行く。着いてくるなよ。一人で、誰にも言わないで来るよう言われてるんだから」

「僕も群れるのはごめんだよ。じゃあ、行く前にさ」

「なんだよ」

「最後に血を吸わせてよ。一口でいいから。本当に美味しかった。正気を失うほどに。おかげであの日、骸に後れを取っちゃった」

「うるさい死ね」


オレはそう吐き捨てて城に入った。