無害な吸血鬼
27ページ/全35ページ
「骸いるんだろ!綱吉さんはどこだ!!」
高らかにそう叫ぶと、またあの梟が現れた。奥の部屋に消える。
来いってことか。ここはリボーンさんの城なのに我が物顔しやがって。むかつく。
嫌々梟に着いていくと、ある部屋にたどり着いた。その部屋の中には綱吉さんがいた。
ていうか、ああ、綱吉さんってあの人だったのか。
「獄寺くん…大丈夫?」
何故オレが心配されるのか。ああ、汗か?いや、でも雨で隠れて分からないはず…いや、それはともかく。
「お怪我はありませんか?10代目」
「え…」
ぼんやりとしていた10代目の顔が驚きの表情に変わる。
「すいません、今、思い出しました」
「獄寺くん…獄寺くん!」
10代目が飛び付いてくる。前はオレと変わらない背丈だったのに…立派になられて。
10代目があの町に来たのは、オレが7歳を過ぎた頃。何故かは知らないけど、突然引っ越してきた。
…あの町で、周りがオレを信用しない中、10代目だけはオレを信じてくれた。オレの目や髪の色を見ても気味悪がらないでくれた。対等に接してくれた。
町を歩けば声をかけてくれて。遊んでいれば誘ってくれて。疑われては庇ってくれた。
嬉しかった。
神さまみたいだって、そう思った。
ああ、だけど。
次
前
戻