無害な吸血鬼
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馬車の中で、何が切っ掛けだったのか、姉にその事が知られたらしい。姉は純粋に家族旅行だと信じていた。

ヒステリーを起こし、母親に詰め寄る姉。

何か言い訳を始める母親。その話の中ではオレが悪者。

黙々と運転をする父。姉が暴れ、バランスを崩す。

倒れる馬車。逃げる馬。

オレの腹に、突き刺さる破片。

気が付くと、骸がオレに槍を構えている。


「さようなら」


槍がオレに向かってくる。その先端はオレの顔面に。

ああ、ほら、やっぱりグロテスクだった。絶対そうだと思った。こいつ性格悪そうだからな。10代目を帰してよかった。あのままここにいたら、きっとトラウマものになっただろう。

もうすぐ槍がオレの顔を貫く。トマトケチャップが飛び散って床に赤い絨毯が敷かれる。

まったく、誰が床を掃除するんだ?そんなことを思いながら頭の中には昔の映像が流れている。