無害な吸血鬼
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「だから、獄寺に手を出すな」


リボーンさんが…心臓を貫かれたはずのリボーンさんが、また槍を掴んだから。


「リボーンさん!」


リボーンさんは血こそ流しているが、その目に揺らぎはない。


「大丈夫なんですか!?」

「ああ。大事ない」


事も無げにいい放つリボーンさんに、骸が初めて顔をしかめた。


「馬鹿な…化け物ですか、あなたは」

「ただの吸血鬼だ」

「吸血鬼とて、心臓を刺されたら死にます。何故死なない」

「何故も何も、心臓を刺された程度で死ぬわけないだろ」


いやいやいやいや。

それはない。流石にそれはないですよリボーンさん。普通、心臓を刺されたら心臓のある奴は死にますよ。

オレの心を読んだのか、リボーンさんが少し驚いた顔をした。…ああ、そういえば前、リボーンさんに聞いたことがあったな。心臓を木の杭で打たれたら死にますかって。それに対してリボーンさんは言うまでもないって言ってたな。なるほど、こういうことでしたか。オレの想像と間逆でしたか。本当に常識外れですねリボーンさん!!

リボーンさんは本当に驚いているようだった。リボーンさんなりに何かしらフォローを入れなければいけないと思っているらしく、しばし思案を巡らせた。


「…ああ、流石に痛いぞ」

「痛いで済むんですか!?」

「まぁ、それはともかくだ」


リボーンさんは先ほどまで自身を貫いていた槍を骸から奪うと、ぺきんと、まるで木の棒のようにへし折った。


「あ」


続いてリボーンさんは骸の首根っこを掴み、割れた窓の外を見た。


「出直してこい」


リボーンさんが骸をぶん投げる。骸は海の向こうに消え、お星さまになった。