無害な吸血鬼
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「獄寺、無事か?」

「は、はい…」


そういうリボーンさんは口から胸から血をだらだら流している。


「リボーンさん…どうしてオレなんかを…」


確かにリボーンさんがいなければオレは死んでいただろう。

でも、代わりにリボーンさんは怪我を負ってしまった。なんの役にも立たないオレを庇ったせいで。

顔を俯かせる。すると上から声が降ってくる。それはいつも通りの声色のリボーンさんの声。


「どうしても何も、家族が危険な目にあってるんだ。そりゃ助けるだろう」


オレは一瞬、何を言われたのかわからなかった。

家族…?

誰が?

オレと、リボーンさんが…?

我ながら間抜けな顔をしていたと思う。

唖然とした顔でリボーンさんを見上げていると、リボーンさんは少し表情を変えた。言葉にするなら、「あれ?」という感じか。


「…お前はオレを…家族と思ってなかったか?」


少し自信のなさそうな声。心なしか少ししょぼんとしているような。

というか、どうしよう。オレリボーンさんを家族とか、全然思ってなかった。主とかそんな感じに思ってた。どうしよう。

家族?家族?オレとリボーンさんが?なんで?


……………。


もしかして。

オレは元人間で、リボーンさんに血を吸われて吸血鬼になった。

つまりリボーンさんの血族が増えたというわけだ。吸血鬼は血を吸って仲間を増やす。

それは、人間に例えるなら子供を生むようなもの…だろうか。

オレは、リボーンさんの子供?

オレは…リボーンさんの…家族?


家族。


頭の中でその言葉を何度も反復する。

思わずリボーンさんの袖をぎゅっと掴む。リボーンさんはオレの頭に手を置いた。

その瞬間、視界がぼやけた。

目が熱い。

オレは、吸血鬼になってから、初めて泣いた。

悲しくなくて泣いたのは、人間だったときも含めて初めてだった。