二人の道
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オレはあなたを尊敬している。

それはいつまでも変わらない事実。


オレとあなたは同じ道を歩んでいるように見えて。

実は違う道を進んでいるんですよね。

そもそも、オレはボンゴレのマフィアで。あなたはフリーのヒットマンですし。

9代目があなたに依頼しなければ、オレたちは出会うことすらなかったのかも知れません。

あるいは、敵として向かい合っていたかも。


そうならなくて、正直ほっとしてますよ。

殺される予感しかしませんから。

今は幸い、似たような道を歩んでますけど。

それもいつまで続くことやら。


何がどうなって、どう転ぶか分からないこの道のり。

いつ終わりを迎えるかも知れない、この道程。

でも、そんなのにビクビクしていても仕方ないですから。

今はただ、あなたと笑い合える日々に感謝し、謳歌しましょう。


いつ終わりを告げられてもいいように。

いつ終わりになってもいいように。


そう思って過ごしていたら、意外にも長く道は続いて。

気付けば10年経っていました。

こんなにも長く、あなたといられるなんて考えてもなかった。

どこかで唐突に、道がプツリと途切れてしまうんだと信じていた。


その時オレは、出来ればあなたと笑って別れたかった。

何故ならオレは、あなたを尊敬してたから。


たとえあなたと出会うことがなかったとしても。


あなたほどの方なら、この世界の人間なら聞こえる伝説は後を絶たないでしょう。

その一つを知るだけで、オレがあなたを尊敬する理由は十分です。

そんなあなたと出会えて、教え子にして頂いて。

そんな幸せな思い出を頂けたのだから、最後は笑って別れたかった。


そしてどうやら、今がその時みたいです。

でも、こんなところで笑えますかね。


こんな抗争の最中で。

死に別れなんて形で。

身体中が痛む中、死を目前にしてあなたを探して。


……ああ、いた。


あなたを見れば、場違いにも程があるけど自然と笑みがこぼれて。

あなたは幸いにもオレの方を見ているけど、オレに気付いているんでしょうか。

オレは銃弾が飛んでくるのを知りながら、それが当たれば死ぬことが分かりながら。あなたに口を開くけど。

言葉を作るより早く、銃弾がオレを貫いた。


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ああ、お別れの言葉を言いたかったのに。