最期だから愛しているといって
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オレは、あなたのこと…

………。


あなたに感じるこの思いは、一体何という名前なのでしょう。

オレはその名を知らない。

あなたはオレを、一体どう思っているのでしょう。

オレはそれを、知らない。


知らないまま、世界は回っていく。

知らずとも、世界は回っていく。


何も知らぬまま、分からぬまま時間ばかりが過ぎていく。

…いいや、それは少し違うか。

オレはあえて知ろうとしなかった。


知ることから逃げていた。

知ってはいけない気がした。

それは逃げだったのかも知れないし、

それは正しい選択のような気もした。

世界には知ってはいけないことと、知らないでもいいことがあって。

…これは、その二つを兼ねていたようにも思えた。


そう、知る必要なんてない。


あなたは10代目の家庭教師で。

オレは10代目の右腕で。

オレとあなたは仲間で。

それだけ分かっていれば十分で。

だからオレは、あなたを見るたび沸き起こるこの思いを無視して、あくまで教え子として。仲間としてあなたに接した。


そうしていたら、もう10年経っていた。


あなたを思うこの感情の、答えは出ぬまま、出さないまま。

もし、誰かにあなたのことをどう思っているかと聞かれたら、尊敬していると答えるだろうけど。

だけどそれは、残念なことに本心ではない。


オレは、あなたを…


…あなたを、どう思っているのだろうか。

長年放置してきた議題を今さらのように出してみても、答えが簡単に出る訳もなく。

そんな中、あなたと顔を合わせると変に気不味く。

変に感情を浮き立たせながら、無駄に時間だけを流していきました。


そうして訪れた、とある任務。

ボンゴレに仇なすものを打ち砕くための任務。


みな奮起し、闘志を燃やし、殺気立っている。

もちろんオレもそのうちのひとりで。

あなたは少し離れたところにいて。

…何故でしょうね。


あなたともう、話せる気がしない。


そしてその予想通りに、オレは向かった任務で命を落とす。

ああ、こんなことになるんだったら。

気不味いままに終わるぐらいだったら。

ぎくしゃくしたまま終わるぐらいだったら。


最期にあなたと、何か話しておけばよかった。


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何の話題もないくせに、そんなことを思った。