俺が変われば何か違った?
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「獄寺」
「………っ!?」
言葉もなく驚く獄寺。
「り…リボーン、さん…?」
「ああ」
獄寺の体温が一気に上がり、顔が赤くなり落ち着きをなくす。
「な、なにを…」
「話がある」
獄寺は拘束される身体をなんとか振りほどこうとする。そんな甘い拘束をオレがするわけもないが。
「あ、あの、離してください…!!」
「離したらお前、逃げるだろ」
「逃げませんから…!!」
「嘘付け」
前回声を掛けただけでダッシュで逃げ出したくせに。
「…今度の任務の件だが……」
「は、はい…っ」
逃げられぬと知った獄寺が全力で話を早く終わらせてほしがっている。
まあ、いいけどな。
「お前。辞退しろ」
「………は?」
獄寺が理解出来ないという顔でオレを見る。久し振りに目が合い獄寺が固まる。
「どういう…意味ですか……?」
「深い意図はない。そのままの意味だ」
「………」
怪訝顔で獄寺がオレを見る。オレは言ってやる。
「あの任務に行ったら…お前、死ぬぞ」
「………っ」
息を呑む獄寺。
オレの言葉が脅しや冗談ではなく、本気だということを知ったのだろう。
獄寺は顔を伏せ、しかしまたすぐに上げる。
「死ぬ覚悟は、10年前から出来ています」
「そいつは結構なことだ。だが進めば死ぬことが分かってて、回避も出来るのにあえて進むのは馬鹿のすることだぞ」
「そうかも知れません。ですが、死ぬのが怖くて任務から逃げ出すなんて10代目の右腕として出来ません」
「つまんねー意地を張るな。その10代目が悲しむぞ」
「……任務で死ぬのは、オレだけではないでしょう?」
「そうだな」
「なら…」
獄寺は淡く笑み、一呼吸の間を置いて言い放つ。
「やっぱりオレだけ助かるなんて出来ません。次の任務でオレが死ぬとしたら、それは天命です」
よく分かってやがる。
「…お話はそれだけですか?でしたら…離して下さい」
「………」
オレは拘束していた腕を話す。離れた獄寺は服を払い、オレと向き合う。
「…心配して下さったんですね。ありがとうございます」
「別に」
オレは帽子を深く被り直しながら、吐き捨てる。
出来れば自分から引き下がってほしかったが、仕方ない。
「ご安心下さい。オレもただで死ぬつもりは…いえ、そもそもこんなところで死ねませんから」
「そうだな」
オレも、お前の説得に失敗した程度で諦めるつもりもない。
オレも、出来る限りのことをしよう。
……手始めに…そうだな。
「獄寺」
「…今度はなんですか?」
「前から言おうと思ってたんだが…オレの愛人の席ならいくらでも空いてるから、いつでも立候補していいぞ」
「な………!?」
落ち着いてきた獄寺の顔がまた一気に赤くなり、表情が崩れる。
「な、に、を……」
「なんだ。お前はオレに好意を持っていると思ってたんだがオレの勘違いか」
「そ、それは…!!」
獄寺はそこで言葉に詰まった。否定も肯定も出来ず、困っている。
「じゃあ、お前が生きて帰った暁には褒美としてデートしてやるよ。費用もオレが持ってやる」
「で…!?」
目を白黒させている獄寺を置いて、オレは踵を返す。
さて、オレにとって勝負はここからだ。
決められた道筋を、変える。
そんなことが出来るのか。
出来たとして、その後どのような変化が起きるのか。
困ったことに嫌な予感しかしない。
つっても、その程度で獄寺を諦めるつもりはないけどな。
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