俺が変われば何か違った?
4ページ/全4ページ
「リボーンさん……」
お前がオレの名を呼ぶ。
…お前からオレを呼ぶなんて。久し振りだな。
「オレ…死にませんでしたよ」
ああ、そうだな。お前は生き残った。
「さ…帰りましょう?帰って、それから……デートを、して下さるですよね?」
ああ、その通りだ。どんなとこでも、好きなとこに連れてってやる。
「それから…今まであなたに大変失礼なことをしてきたオレに、あなたが気に掛けて下さった理由も…教えて下さるんですよね」
ああ、そうだ。つってもそんな大した理由じゃないけどな。
オレはお前の気持ちに気付いてて。
オレはお前の思いを尊重して。
オレはお前を死なせたくないと思ってた。
それだけだ。
「リボーンさん……」
お前がオレの名前を呼ぶ。
見れば、その目は潤んでいた。
…いい年した男が、この程度で泣くんじゃなねーよ。
オレはため息を吐いた。
「どうして……」
獄寺の呟きが聞こえる。
どうして、と言われてもな。
これがお前を生かした、代償という奴だろう。
ここで死ぬはずだったお前が生きる代わりに、ここで生き残るはずだったオレが死ぬ。
たった、それだけのことだろう。
「リボーンさん……」
お前がオレに近付く。
「リボーンさん…リボーンさん……」
お前がオレに触れる。
―――――どこからか、銃声が聞こえた。
お前の身体に衝撃が走り、目が見開かれ、オレに向かって倒れこんだ。
お前の口元と腹から、赤い液体。
………。
…ああ、こうなるのか。
なんとなく、予想は付いていた。
未来は変えられず、変えようとすればろくな結末が待っちゃいない。
お前が咳き込む。…まだ、生きていたか。
「…すみません。油断しました」
気にすんな。オレの方こそお前を守りきれなかった。
「…リボーン、さん」
お前がオレの名を呼ぶ。お前は何を言おうとしているのか、言葉を詰まらせていた。
…こんな死に間際の状態で、一体何を思い悩んでいるのやら。
「オレ……」
意を決したのか、獄寺が言葉を紡ぐ。その身体は急激に冷えていく。
「オレ…あなたのこと……」
そこまで言って、沈黙。
…こいつ、こんな半端な状態で死ぬつもりか?
と思っていたら、言葉が続いた。
「あなたのこと……ずっと、ずっと前から…好きでした」
「………知ってたよ」
そう言ってやれば、獄寺の身体が震える。
「お前がオレに気を遣っていることも、知ってた。気にすんなって言いたかったんだが、お前はオレから逃げ回っていたな」
「そ、それは……」
「お前がオレに気を遣うなんて、しなくていいんだよ。次からは素直に告ってこい」
お前はオレの言葉をどう受け止めたのか、少し黙って。やがて…静かに、笑い出した。
「………そう、ですね」
笑いながら、死にながら、けれど穏やかな顔で肯定の言葉。
「…もし、次があったなら。その時は……迷惑でないのなら、あなたに気持ちを…伝えたいと、思います」
「ああ。そうしろ」
それきり、オレたちは黙り込む。
血が抜け、命が流れ、世界が暗闇に満ちていく。
おやすみ、獄寺。
―――また会おう。
++++++++++
次はもっと上手くやってみせる。
前
戻