俺が変われば何か違った?
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「リボーンさん……」


お前がオレの名を呼ぶ。

…お前からオレを呼ぶなんて。久し振りだな。


「オレ…死にませんでしたよ」


ああ、そうだな。お前は生き残った。


「さ…帰りましょう?帰って、それから……デートを、して下さるですよね?」


ああ、その通りだ。どんなとこでも、好きなとこに連れてってやる。


「それから…今まであなたに大変失礼なことをしてきたオレに、あなたが気に掛けて下さった理由も…教えて下さるんですよね」


ああ、そうだ。つってもそんな大した理由じゃないけどな。


オレはお前の気持ちに気付いてて。

オレはお前の思いを尊重して。

オレはお前を死なせたくないと思ってた。


それだけだ。


「リボーンさん……」


お前がオレの名前を呼ぶ。

見れば、その目は潤んでいた。

…いい年した男が、この程度で泣くんじゃなねーよ。

オレはため息を吐いた。


「どうして……」


獄寺の呟きが聞こえる。

どうして、と言われてもな。

これがお前を生かした、代償という奴だろう。

ここで死ぬはずだったお前が生きる代わりに、ここで生き残るはずだったオレが死ぬ。

たった、それだけのことだろう。


「リボーンさん……」


お前がオレに近付く。


「リボーンさん…リボーンさん……」


お前がオレに触れる。



―――――どこからか、銃声が聞こえた。



お前の身体に衝撃が走り、目が見開かれ、オレに向かって倒れこんだ。

お前の口元と腹から、赤い液体。


………。


…ああ、こうなるのか。

なんとなく、予想は付いていた。

未来は変えられず、変えようとすればろくな結末が待っちゃいない。

お前が咳き込む。…まだ、生きていたか。


「…すみません。油断しました」


気にすんな。オレの方こそお前を守りきれなかった。


「…リボーン、さん」


お前がオレの名を呼ぶ。お前は何を言おうとしているのか、言葉を詰まらせていた。

…こんな死に間際の状態で、一体何を思い悩んでいるのやら。


「オレ……」


意を決したのか、獄寺が言葉を紡ぐ。その身体は急激に冷えていく。


「オレ…あなたのこと……」


そこまで言って、沈黙。

…こいつ、こんな半端な状態で死ぬつもりか?

と思っていたら、言葉が続いた。


「あなたのこと……ずっと、ずっと前から…好きでした」

「………知ってたよ」


そう言ってやれば、獄寺の身体が震える。


「お前がオレに気を遣っていることも、知ってた。気にすんなって言いたかったんだが、お前はオレから逃げ回っていたな」

「そ、それは……」

「お前がオレに気を遣うなんて、しなくていいんだよ。次からは素直に告ってこい」


お前はオレの言葉をどう受け止めたのか、少し黙って。やがて…静かに、笑い出した。


「………そう、ですね」


笑いながら、死にながら、けれど穏やかな顔で肯定の言葉。


「…もし、次があったなら。その時は……迷惑でないのなら、あなたに気持ちを…伝えたいと、思います」

「ああ。そうしろ」


それきり、オレたちは黙り込む。

血が抜け、命が流れ、世界が暗闇に満ちていく。


おやすみ、獄寺。

―――また会おう。


++++++++++

次はもっと上手くやってみせる。