マフィアだということ
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「な…んで、どうして…!」


数多い屍の上で、ツナは嘆いていた。ああどうして。そう、どうしてだ。


「どうして獄寺くんを見殺しにした!リボーン!!」


嘆いて、叫ぶツナ。しかしリボーンはいつも通りだ。愛人を失ったというのに、いつも通りだった。


「どうしてって言われてもな」


やれやれ、とリボーンは嘆息する。そんなことも分からないか。ダメツナ。


「獄寺とお前。助けるならそらボンゴレ10代目だろう」


まるで簡単な問題をどうしてこうも分かりやすく説明せねばならないのか。そんな口調にツナは更に激怒する。


「はぁ…!?オレはあのままでも腕一本、いや、もしかしたら指数本で済んだかも知れないのに!オレのそんなものよりも獄寺くんの命は劣ってるというの!?」

「当然だろ」


今度こそツナは言葉を失う。なんだって?今こいつは何て言いやがった?


「ボンゴレは完璧じゃないといけねぇんだよ。部下一人のためだけに腕を失う?そんなことあっちゃならねぇ」


そんなこと?どんなことだ。腕一本と部下の命を天秤に掛けて腕が勝つ?そっちの方こそあってはならないだろうに。ツナには理解出来ない。


「…だから。お前には分かんねぇだろうなって言ったんだ」


確認するのも億劫かのようなリボーン。冷たい目がツナを刺す。


「お前はボンゴレ10代目で、元一般人だからな」


それはついさっき。そう、ほんの少し前。…まだ、獄寺が生きていたときに言われた言葉。


「オレと獄寺はボスになるために生まれたわけじゃねぇ。そして生まれたときからマフィアだ」


この世に生を受けた瞬間から、一般人であるツナとは価値感からしてまず違う。


「オレたち部下はボスの助けになるだけの存在なんだよ。そこに私情はいらねぇし、あってはならねぇ」


例え目の前で愛人が犯されていようと、残虐されていようと、助けを求められていようと。ボスの為なら切り捨てなくてはならない。それがこの世界の常識。


「だか…らって…!」


どれほど言われようともツナは納得出来ない。これでいいのか。これで本当にいいのだろうか。


「―――リボーンは」

「あ?」

「リボーンの気持ちはどうだったんだよ…!」


確かに、マフィアとしての行動として。それは正しいことだったのかも知れない。

それを理解した上でリボーンは獄寺を見捨てて。そして獄寺もまたそれを受け入れていたのかも知れない。


―――けれど。


リボーンの気持ちはどうだったのだろうか。

マフィアじゃない。殺し屋でもない。ただ一人の、獄寺隼人の愛人のリボーンとしてのその気持ちはどうだったのだろうか。