マフィアだということ
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「ねぇ、リボーンさん?」

「なんだ」


ある日の深夜。部屋の一室で獄寺は革張りのソファに座りながら、リボーンに寄り掛かかって聞いてきた。


「オレなんかを愛人にして、よかったんですか…?」

「お前はいやだったか?」

「そんなことはないですけど…」


獄寺は暫く言うかどうか戸惑って。けれどやがて意を決したかのように口を開いて。


「オレは…欠陥品、なんですよ?」

「それは獄寺の人間が言ったことか?」

「はい…」


それはまだ獄寺が子供だった頃。まだ獄寺が屋敷の中で暮らしていて外の世界を知らなかった頃。

獄寺は感情を欠落した子供だと蔑まされていた。

けれどそれは事実だった。何故なら獄寺はそうなるようにと教育されていたのだから。

獄寺は使い捨ての駒、消耗品のひとつぐらいにしか見られてはなかった。

紆余曲折の末に外の世界に出て、世の中というものを体験して少しは取り戻せたのだがそれでも時折空回りしてしまう。

これが原因で若い頃は苦労したものだ。いや、今も若いし、苦労しているのだが。

過去を思い出す獄寺の頭を、リボーンはくしゃっと撫でて。


「―――獄寺」

「…はい」

「お前が欠陥品だろうとなんだろうと関係はない。オレがお前が気に入ったから愛人にしただけだ」

「………はい」


リボーンは獄寺が欠陥品であるというこをと否定しなかった。

何故ならそれは事実だから。確かに獄寺は人間として思考的に欠落している部分がある。

10年の歳月の中で時間を掛けて直していったとはいえ、最初獄寺がツナに対しかなり陶酔していたのもこれが原因だ。

…けれど、リボーンにとってそんなことで悩む必要なんてない。


「オレ以上に完璧な人間なんて、いるか?」


軽く聞いてきたリボーンに獄寺は一瞬きょとんとして。そしてすぐに笑って。


「―――そうですね。リボーンさんから見れば、人はみんな欠陥だらけですよね」

「当たり前だ」

「はい…リボーンさん」

「なんだ」

「……愛してます」

「――オレもだ」


愛人に持つ感情程度だがな、とリボーンは付け加えて。獄寺は分かってますと笑った。

その顔は、とても幸せそうだった。