マフィアだということ
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「それで、なんでしょう10代目」

「えっと…」


無垢な瞳で問いられてツナは困った。ていうかリボーン、オレ獄寺くんのことがまだ好きなんだけど。オレが取らないとも限らないんだけど。

てか前リボーンが言ってたように略奪しちゃうよ!?いいのそれでも!?ああもう自分が自分で何考えてんのか分からなくなってきた!


「えと、リボーンさんのことですか…?」


色々考えてるツナに獄寺が言ってくる。ええそうです。あの鬼畜家庭教師のことです。


「…うん。―――獄寺くん。あんな奴のどこがいいの?」

「また、直球で凄いこと聞いてきますね10代目」

「確かにリボーンは強いし頼りになるしありえないほど格好良いけどさ!なんだかんだでみんなのこと考えて行動出来る凄い奴だけどさ!!」


って、何言ってるんだオレは、とツナは内心突っ込む。好敵手のいいところ言ってどうするオレ、と。


「―――じゃなくて。リボーンはああ見えて…というか見たまんま鬼畜だよ!?暴力とかすぐ振るうよ!?」

「なに言ってるんですか。リボーンさんがそんなことするのは10代目だけです」

「…ごめん獄寺くん。ちょっと今からリボーン締めてきていい?」

「駄目です」


ツナの冗談…半分本気半分の言葉にも獄寺は真面目に返答する。…出会ってからもう10年になるけど、獄寺は変らない。

獄寺の言動に合わせて銀の髪が揺れる。少し近付いて香るのは火薬と、硝煙と。そして昔から使っている大人びた香水の匂いで…


「―――――…ね。獄寺くん」

「はい?」



「―――好きです」



ツナのその言葉に、獄寺の頬が赤く染まる。ドアの向こうでその想いを聞いたばかりだというのに。やはり直に言われるのとはまた違うのか。


「…その、10代目…一応オレには愛人とはいえリボーンさんが…」

「分かってる。オレが勝手に言っただけだから」


でもさ、とツナは続ける。


「でも…もしオレが、リボーンからオレに乗り換えない?って聞いてきたら。どうする?」

「それは10代目の命令ですか?と聞きます」

「キミの知ってるオレだとなんて答えるのさって言うかな」

「…そうですね…10代目は、"10代目の命令"を使うのを最も嫌っているお方ですから、そんなことはしないかと。…と返します」


分かっていながらなんで聞くんだと、ツナは少し睨んだ。対照的に獄寺は笑いながら。


「―――オレ、"10代目の命令"でしたら受け入れますよ?」


貴方はオレの特別な人ですから、と獄寺は微笑む。それは魅力的な提案で。でもそれでは…


「…ありがと。でもね」


ツナは獄寺の髪をさらりと撫でて。


「オレ、その手段以外でキミを傍に置きたいから」

「はい。…貴方は、そういうお方です」

「…獄寺くん」


きゅっと、ツナは獄寺を抱きしめる。獄寺は抵抗しない。


「好きで、ごめん」


告白と謝罪。獄寺はツナの額の少し上に小さなキスをして。


「こちらこそ…貴方の想いに応えられなくて。すいません」


獄寺はツナの束縛から抜け出して。部屋を出て行こうとする。



―――その背に向かってツナが声を掛ける。



「ねえ獄寺くん」

「なんでしょう」

「もしもさ、獄寺くんがまだリボーンと付き合う前にオレが獄寺くんに告白したら……獄寺くんはオレを受け入れた?」


獄寺は暫し思案したあと答えた。どうでしょう。あやふやな答えだ。


「そう…――あと一つ。オレがキミの特別な人なら、リボーンはキミのどんな人?」


ああ、それは簡単ですよと、獄寺は笑いながら答えた。


「10代目はオレの特別な人で…―――リボーンさんはオレの…大切な人です」


パタン。扉が閉められて部屋にはツナ一人。

先程獄寺の唇が触れた額はそこだけ、熱を帯びているかのように熱かった。