深く出来た溝の埋め方
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それは、寒い寒い冬の朝。

太陽が顔を少しだけ見せ出した時間、仄かに雪が舞う中を一人の女が歩いてた。

早朝、仕事に行く途中……なんて。そんなどこにでもある、ありふれた風景。

けれどそんな風景も、


「………?」


あっという間に終わりを告げる。

彼女が目の端に捉えた、いもの。

点々と続くそれは、普段から誰も近付かない路地の裏へと向かってた。

その路地へ、彼女は何の躊躇もなく足を向ける。

世界が変わったかのように一気に暗くなる視界。それでもの道標ははっきりと見て取れた。

そして、やがて彼女は辿り着く。


の終着点。


どこに繋がるかも分からぬ道の途中、壁に背を付け、座り込むように、黒尽くめの少年が倒れていた。

その身体は血で汚れ、その肌は血の気がなく、その身体は触れてみると冷たく、気を失っている少年。

彼女は服が汚れるのも構わずに少年を抱きかかえると、来た道を戻った。