深く出来た溝の埋め方
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リボーンは理解する。

自分は、助けられなかった獄寺の母の代わりに助けられたのだと。

けれどその解釈は、


「まあ、それは何故オレがリボーンさんを見つけられたかであって、リボーンさんを助けた理由は別にあるんですが」


顔を上げた獄寺にあっさりと否定される。


「…そうなのか?」

「ええ。リボーンさんを助けた理由なんて、至ってシンプルなものです」


獄寺はリボーンを見て、笑う。


「目の前で子供が傷を負って倒れてたんです。助ける理由なんて、それだけで十分でしょう?」

「…それだけ?たったそれだけの理由で、お前はオレに薬と食料を与え、傷を負ったのか?」

「まあ、そうですね」


リボーンはため息を吐く。


「助けてもらった手前、今まで黙っておいたが…馬鹿だな。お前」

「あっはっは。耳が痛いです」


本当に呆れたような顔をして言うリボーンに対し、獄寺は朗らかに笑ってみせる。そしてその笑みを抑え、


「…少し話しすぎましたね。続きは場所を変えてからしましょう」

「…本当に、まだオレと関わるつもりなのか?」

「ええ。…そう心配しないでください。スラム街の女ってのはタフなんです。この程度の怪我じゃへこたれません」


言いながら獄寺は立ち上がり、新しくローブを纏う。フードを被る。


「早めに移動しましょう。あいつがいつここを嗅ぎつけるとも分かりません」

「ああ…そういえば、あいつ情報屋がどうこうって言ってた気がするな。そいつからここがバレる可能性もあるのか」


リボーンが呟いた一言に、獄寺の動きがぴたりと止まる。


「……………情報屋?」

「ん?ああ。確かにそう聞こえた。この街にはそういう奴がいるのか?」

「……ええ、まあ…」


獄寺の歯切りが悪い。心当たりでもあるのだろうか。


「どうした?知ってる奴か?」

「…知って……ますね。一応」

「…?そいつはこの場所を知っているのか?」

「知ってますねえ」

「そいつは聞かれたら、ここを教えるか?」

「教えないでしょうねえ」

「なら、何を心配してるんだ?そいつが痛めつけられることか?」

「いえ、その辺も全然……その話も後で。今はここを出ましょうか」

「?ああ…」

「…ああ、そうそう。リボーンさん。そこの机の上の帽子、実はリボーンさんのですよ」

「ん?何だそうなのか」

「ええ。…それで…その帽子の下に……」

「帽子の下?」


リボーンが帽子の置いてある机に向かう。

その様子を獄寺が目で追いかけ……

その時扉が荒々しく開かれる音がした。

二人が振り向くと同時、数人の男が部屋に入り込み。

二人に銃器を突きつける。

獄寺は瞬時にリボーンの前に立ち。

それに反応するように、男たちの指先に力が入り。

リボーンの手が帽子に触れ。


そして―――――