深く出来た溝の埋め方
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リボーンが気が付いたとき、その場に動くものは存在しなかった。
ただただ、赤い世界が広がっていた。
目の前には、先ほど銃器と殺気を向けてきた男たちの死体。
リボーンの手には、帽子の下に置かれていた一つの拳銃。
リボーンの足元には、気を失い倒れている獄寺。
「………」
リボーンは獄寺を見遣り…
「記憶は戻ったかい?」
響いた声に、動きを止めた。
その声は、あの時のフードを纏った女のもの。
いつの間にかあの女が現れていた。音もなく、動きもなく。
それに対してリボーンは驚きの感情…どころか、何の反応も見せず。
「ああ」
と、頷いただけだった。
「こいつらはお前の計らいか?」
「まあね。文句ある?元はといえばリボーンが取り逃がしたのが原因だと思うんだけど」
「………」
リボーンは何も言わず、部屋から出ようとする。
その後ろから、女の声が投げられる。
「彼女、生きてるみたいだけど。殺さないの?」
「そいつは一般人だ。わざわざ殺す必要はない」
「キミの顔、覚えられたと思うけど」
「それがどうした。その程度で何の不都合が?」
「………まあ、そうだね。うん、その通りだ」
女が微笑み、リボーンの隣に立つ。
「死体。処理しておけよ。オレは仕事の続きに戻る」
リボーンは女に冷たく言い放ち、歩き去る。
女はやれやれと肩を竦め、死体を見遣る。すると死体はたちまち霧のように消え去った。
女はリボーンの後を追う。
「まったく、聞いてよリボーン。本当はもっと早く迎えに来れるはずだったんだけどさ、情報屋がいつまで経っても来なくって―――」
女の声が遠くなる。
後に残ったのは、気を失った獄寺と。
床に落ちた、黒い帽子。
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