深く出来た溝の埋め方
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その翌日。

一日掛けて検査と治療を終え、リボーンは今主たるボンゴレ10代目の前に立っていた。


「具合はどう?リボーン」

「問題ない」

「そう…仕事の方は?」

「全員殺した」


淡々と告げるリボーンに、10代目たる沢田綱吉は疑問を覚えない。

それほどまでにリボーンはいつも通りで。それをマーモンは後ろから満足気に見ていた。

マーモンはリボーンが好きだった。特にその人間離れした強さと戦闘センスに惹かれていた。

最も、リボーンはマーモンの気持ちには気付いてないし、マーモンも思いを告げるつもりはなかったので二人の関係はあくまで同僚だったが。


「リボーン、マーモンにお礼言っときなよ。リボーンが行方知れずって聞いて、捜索に志願して一生懸命探してくれたんだから」

「そうなのか?」

「別に。たまたま暇だったし、しょうがないから探してあげただけだよ」


そっぽを向き、何でもないという風に言うマーモン。


「リボーンがいないと僕がリボーンの仕事しなくちゃいけなくなるし?どうしても礼がしたいなら、働きで返してくれればいいよ」

「そうか。分かった」


マーモンの言葉を正面から受け止め頷くリボーンに、事情を分かっているツナは何とも言えぬ気持ちになる。


「…復帰はいつから出来そう?」

「今からでも」

「怪我してるんでしょ」

「かすり傷だ」

「ああ…そういえば医療班から聞いたよ。適切な処置が施されてたって。リボーンがお世話になった人のおかげだね」

「………」

「オレからも是非お礼を言っときたいんだけど、ええと、その人の名前は…」

「ツナ、その話は…」


獄寺の話を思い出させるかとばかりにマーモンが声を出す。

だが、その話を打ち切ったのは他ならぬリボーンだった。


「あいつは、マフィアは嫌いだそうだ」

「それは残念」


その言葉を最後に、この話題は終わり。

これ以降この話題は出ることはなく、次からは仕事の話が続く……はずだった。

はずだったのだが。


「沢田」


リボーンの同僚であるラルが扉を開き、主の名を呼び。


「獄寺と名乗る女が来てるんだが、どうする?」