深く出来た溝の埋め方
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「ま、当然だね。リボーンはボンゴレの特殊部隊アルコバレーノの一人なんだから」

「アルコバレーノ…噂程度なら聞いたことがありますね。極秘、秘密裏に依頼された任務を遂行する幻の部隊。どんな無茶な仕事であれ任せたなら達成率100%のボンゴレの切り札」

「…なんでそこまで一般人にバレてるの……」


ツナは頭を抱えた。


「ご安心ください。情報はみんな小出しにしか知りませんし、そもそもアルコバレーノなんて夢物語や御伽噺の類だと思ってますから。…オレも、まさか本当にあるとは今まで思ってませんでした」


さて。と獄寺は一息吐き、リボーンに向き合う。鞄の中に手をやり、目当ての物を取り出し、リボーンに捧げる。

それは……


「忘れ物ですよ。リボーンさん」

「…わざわざ届けてきてくれたのか」


獄寺の手にあるもの。

それは、結局リボーンが被ることのなかった、あの帽子。

少し戸惑いながらも、リボーンは帽子を受け取る。獄寺は微笑みながら渡す。


「…何故だ?」

「え?」

「お前は…オレたちが、マフィアが憎いんだろう?なのに、何故…わざわざ、ここまで……」

「確かに母を殺した奴はマフィアですし、そいつは許せませんが…別にオレは、全てのマフィアを憎んでいるわけじゃありませんよ」

「………」

「リボーンさんのことは、普通に好きですしね」

「獄寺…」


その獄寺の言葉に、リボーンは少し救われた顔をする。

その光景を、マーモンは怒りの表情で見ている。

せっかくいつもの、まるで機械のようなリボーンに戻ったというのに。またリボーンが人間のような顔をしているのが気に食わないのだ。


「用件はそれだけかい?だったら…」


短く、冷たく言い放つマーモン。その身に殺気を纏わせる。

マーモンは獄寺を生かして帰すつもりはない。私怨もあるが、獄寺はボンゴレの情報を知りすぎている。アジトの場所、アルコバレーノの存在。他にも何を知られているか。

リボーンの恩人だといっても知るものか。咎めならあえて受けよう。だから殺す。

マーモンがそんな決意を固め、幻術を使おうとローブの中で構えを取る。

今まさに殺されんとしている獄寺は、そんなことも知らず飄々と答える。


「用件…か。ああ、これで終わり…のはずだった。だけど、話をしているうちにもうひとつ出来た」

「もうひとつ?」

「その前に確認ですがリボーンさん…あなたはアルコバレーノで、裏の仕事をしている。…そうなんですね?」

「そうだ」

「……どうして、アルコバレーノに入隊したんですか?」

「…明確な理由はないな。気が付いたらアルコバレーノにいて仕事をしていた。そんなところだ」

「………そうですか」


獄寺はツナと向き合う。目を向ける。鋭い目付き。まるでナイフのよう。


「ふざけるな!!!」


獄寺の怒号が響いた。

突然の大声に周りが呆気にとられる。獄寺は構わず続ける。


「こんな子供に死ぬかも知れない仕事を押し付けやがって!!恥を知れ!!」

「ご…獄寺」

「なんですか!?」


獄寺の剣幕に驚きながら、リボーンは一応のフォローをする。


「別にオレは、現状に不満は…」

「なら満足してるんですか!?今の仕事が楽しくて楽しくてしょうがなくて、人を殺すのが生き甲斐なんですか!?」


獄寺に聞き返され、リボーンは少し考える。そして気付いた。


「……いや、それはないな」

「でしょう!?」