深く出来た溝の埋め方
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三日後。
「リボーンさん、調子はどうですか?」
「身体の方はだいぶ楽になった。だが…記憶の方は……」
「そうですか…」
口を噤み、何かを考える獄寺。
「…すまない」
「いえ、そうじゃなくて……」
「ん…?」
「……………」
「獄寺…?」
リボーンが獄寺を見上げると、そこには少し思いつめた顔をした獄寺。
「リボーンさん…あなたは……」
獄寺はそこまで言って、言葉を途切らせる。
暫く沈黙を作ったのち、獄寺は力のない笑みを浮かべた。
「いえ…なんでもないんです」
「………?」
「すみません。本当に、なんでもないんです。気にしないでください。…ああ、そうだ。林檎を貰ってたんです。切りますね」
「ん?ああ…」
獄寺がナイフを取り出し、赤く熟れた林檎の皮を剥く。
獄寺の様子が少しおかしい。
一体どうしたのだろうか。
そういえば、獄寺は自分のことを調べてみると言っていた。
何か分かったのだろうか。
………。
リボーンがそんなことを考えていると、
「―――あいたっ」
そんな獄寺の声が聞こえた。
「ご、獄寺。大丈夫か?」
リボーンが慌てて顔を上げると、獄寺が指をくわえていた。
「あいたた。…すみません。ちょっと指切っちゃいました」
苦笑を浮かべながら獄寺は指先を見せる。
「…どうしたんだ?普段の獄寺はそんなミスは……」
台詞の途中、獄寺の傷口が目に入り、リボーンの言葉が途切れた。
それはなんてことはない、小さな一筋の傷。
そこから赤い液体がつうっと流れた。
赤。
血。
命の雫。
赤い液体。
朱。
赫。
紅。
緋。
―――――赤。
リボーンの目が見開かれる。
「…リボーンさん?どうなさいましたか?」
獄寺の声に、リボーンはハッと正気に返った。
「…いや、なんでもない」
「…?そうですか」
「ああ」
それからふたりは林檎を食べ、眠った。
そんな日々が、数日続いた。
そんな、ある朝。
その日は唐突に訪れた。
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