深く出来た溝の埋め方
4ページ/全17ページ


三日後。


「リボーンさん、調子はどうですか?」

「身体の方はだいぶ楽になった。だが…記憶の方は……」

「そうですか…」


口を噤み、何かを考える獄寺。


「…すまない」

「いえ、そうじゃなくて……」

「ん…?」

「……………」

「獄寺…?」


リボーンが獄寺を見上げると、そこには少し思いつめた顔をした獄寺。


「リボーンさん…あなたは……」


獄寺はそこまで言って、言葉を途切らせる。

暫く沈黙を作ったのち、獄寺は力のない笑みを浮かべた。


「いえ…なんでもないんです」

「………?」

「すみません。本当に、なんでもないんです。気にしないでください。…ああ、そうだ。林檎を貰ってたんです。切りますね」

「ん?ああ…」


獄寺がナイフを取り出し、赤く熟れた林檎の皮を剥く。

獄寺の様子が少しおかしい。

一体どうしたのだろうか。

そういえば、獄寺は自分のことを調べてみると言っていた。

何か分かったのだろうか。

………。

リボーンがそんなことを考えていると、


「―――あいたっ」


そんな獄寺の声が聞こえた。


「ご、獄寺。大丈夫か?」


リボーンが慌てて顔を上げると、獄寺が指をくわえていた。


「あいたた。…すみません。ちょっと指切っちゃいました」


苦笑を浮かべながら獄寺は指先を見せる。


「…どうしたんだ?普段の獄寺はそんなミスは……」


台詞の途中、獄寺の傷口が目に入り、リボーンの言葉が途切れた。

それはなんてことはない、小さな一筋の傷。

そこからい液体がつうっと流れた。





血。


命の雫。


い液体。














―――――


リボーンの目が見開かれる。


「…リボーンさん?どうなさいましたか?」


獄寺の声に、リボーンはハッと正気に返った。


「…いや、なんでもない」

「…?そうですか」

「ああ」


それからふたりは林檎を食べ、眠った。

そんな日々が、数日続いた。

そんな、ある朝。

その日は唐突に訪れた。