深く出来た溝の埋め方
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「死ね」
女が冷たい目で獄寺に告げる。
獄寺の身体の力が抜け、目から光が消える。
そしてその頃には。
リボーンは相手の背後を取り、その首を爪で貫くように突いていた。
「―――――っ!?」
女の首筋から物凄い勢いで血飛沫が舞う。
リボーンの視界には、その映えるような赤以外はモノクロに映っていた。
風もなく。音もなく。思考はただただ、相手を殺すことだけに向けられている。
そしてそんな中、リボーンは確かに女の首を抉り切ったはずなのになんの手応えも感じ取れずにいた。
女の姿がまるで霧のように薄れて消える。地面に濡れた血も、リボーンが浴びた返り血も。
『―――ああよかった。リボーン、記憶はなくても身体は覚えているんだね』
どこからともなく、今消えた女の声。
『待ってて。すぐに迎えに行くよ』
その声を最後に、女の気配が消えた。
同時に風が吹き、音が戻り、世界に色が付く。
自分を取り戻したリボーンの視界に映ったのは、
その身を赤く染めた、獄寺の姿。
「―――獄寺!!」
リボーンは獄寺へと駆け寄る。獄寺はうっすらと目を開いて、リボーンを見る。
「リボーンさん…」
獄寺は何かを言いかけ…そのまま目を閉じ、意識を失った。
リボーンは獄寺を抱きかかえ、来た道を引き返す。
リボーンは獄寺の家へと急いだ。
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