永遠と言う名の真実
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さほど大きい声じゃないくせに、それは周りに多大な影響を与えたようだった。

周りの人間が、ざわりと騒いで、こちらを見る。

「ま、魔物――!?」

村人の誰かであろうか、男が叫んだ。

その声に多少の鬱陶しさを感じつつ、オレはオレの正体を暴いた男を見る。

…親父と同じ、気配がした。

――陰陽師、か…

ならば嘘誤魔化しは通用しないだろうと、オレは正直に言うことにする。

「確かに、オレは魔物だ」

「汚らわしい魔物が、何故こんな所に!?」

陰陽師ではなく、叫んだ男が応えた。

オレはその男の方を向いて、言ってやる。

「悪いな。少しばかり人間の祭りってものを見てみたかったんだ」

「ならば目的は果たされただろう!とっとと立ち去れ!!」

「――言われなくとも。もう、祭りを楽しむって雰囲気でもないしな」

オレは言われた通りに去ろうとする。そこで、ツナと目が合った。

「ご――」

――の馬鹿っ

オレは慌ててツナの口を塞ぐ。周りから悲鳴が上がった。

「貴様!その少年に何をする気だ!!」

「…うるせぇな。別に取って食おうってわけじゃねぇよ…村を出るまでの、保険だ。村人が変な気を起こさないようにな」

…咄嗟の言い訳にしては、まあまあだと思う。

このままでは本当に村人に袋にされかれないので、オレは早々にそこを出ることにした。


「――ここまで来れば、大丈夫か…?」

ご丁寧にも付いてきた男を遠目に見ながら、オレはふぅとため息一つ吐いて、ツナを開放する。

「――ぷは…って、いきなり何するのさ獄寺くん!!」

「それはこっちの台詞だ!オレの名前呼ぼうとしやがって…あそこでオレとの関係がばれたらお前、村中から変な目で見られるんだぞ!」

小声での応酬。しかし納得はしてない様子のツナ。

「良いよ別に…オレには親しい友達もいないし、それよりも獄寺くんがあんな目で見られたことの方が、よっぽど…」

「何にしても。ツナ、お前暫く、オレの所に来るな」

「――え」

「今回の件で、オレはこの村から迫害視されるだろう。そんなオレの所に来たら、どうなるかぐらい…お前にだって分かるだろう?」

「それ、は……」


「おい魔物!いつまで少年を束縛しているつもりだ!!早く開放しろ!!」

「わーってるよ!うっせぇなぁ!!…そう言うことだ。ツナ。…じゃあな」

「や、だ…獄寺くん!」

「いいから…行け!!」

オレはツナの背中を思いっきり叩いて、村の方へと移動させる。ツナは渋々といった感じで、歩いていった。


――じゃあな、ツナ…


もう会うことも、ないだろう……

ツナはきっと、もうオレの所には来れないだろう。

オレは汚らわしい魔物として、村人に認識されてしまった。

そうなれば、潔癖症な村人はきっと、オレの住む村外れを禁忌の場所と指定するだろう。

そんな所に、ツナみたいな子供が来れるはずもない。

それ以前に、親や保護者がオレの所に来させるのを許さないだろう。

つまり、これがオレとツナの…最後の別れということだ。


オレはツナが見えなくなるまで見届けて、独り、ぽつりと呟いた。

「じゃあな…ツナ。久しぶりに、本当に久しぶりに――楽しかったよ…」

オレは踵を返して、あの場所へと戻っていく。

戻る途中、気まぐれに、ホントに気まぐれに、鎖を手と手に取って、引っ張り合ってみる。


――断ち切れない。


…空を見上げれば、そこには綺麗な月が輝いていて。

……月はいつまで経っても、相変わらずそこにいて。

――オレの鎖もいつまで経っても、立ち切れやしなくて。

それはもう、きっと永遠といって良いほどの永い年月で続いていて――

それはきっと…変わらない、それはきっと――真実とも言って良いだろう。

それはきっと、永遠という名の、真実――…


++++++++++

変わらない、真実。