永遠と言う名の真実
2ページ/全2ページ
さほど大きい声じゃないくせに、それは周りに多大な影響を与えたようだった。
周りの人間が、ざわりと騒いで、こちらを見る。
「ま、魔物――!?」
村人の誰かであろうか、男が叫んだ。
その声に多少の鬱陶しさを感じつつ、オレはオレの正体を暴いた男を見る。
…親父と同じ、気配がした。
――陰陽師、か…
ならば嘘誤魔化しは通用しないだろうと、オレは正直に言うことにする。
「確かに、オレは魔物だ」
「汚らわしい魔物が、何故こんな所に!?」
陰陽師ではなく、叫んだ男が応えた。
オレはその男の方を向いて、言ってやる。
「悪いな。少しばかり人間の祭りってものを見てみたかったんだ」
「ならば目的は果たされただろう!とっとと立ち去れ!!」
「――言われなくとも。もう、祭りを楽しむって雰囲気でもないしな」
オレは言われた通りに去ろうとする。そこで、ツナと目が合った。
「ご――」
――の馬鹿っ
オレは慌ててツナの口を塞ぐ。周りから悲鳴が上がった。
「貴様!その少年に何をする気だ!!」
「…うるせぇな。別に取って食おうってわけじゃねぇよ…村を出るまでの、保険だ。村人が変な気を起こさないようにな」
…咄嗟の言い訳にしては、まあまあだと思う。
このままでは本当に村人に袋にされかれないので、オレは早々にそこを出ることにした。
「――ここまで来れば、大丈夫か…?」
ご丁寧にも付いてきた男を遠目に見ながら、オレはふぅとため息一つ吐いて、ツナを開放する。
「――ぷは…って、いきなり何するのさ獄寺くん!!」
「それはこっちの台詞だ!オレの名前呼ぼうとしやがって…あそこでオレとの関係がばれたらお前、村中から変な目で見られるんだぞ!」
小声での応酬。しかし納得はしてない様子のツナ。
「良いよ別に…オレには親しい友達もいないし、それよりも獄寺くんがあんな目で見られたことの方が、よっぽど…」
「何にしても。ツナ、お前暫く、オレの所に来るな」
「――え」
「今回の件で、オレはこの村から迫害視されるだろう。そんなオレの所に来たら、どうなるかぐらい…お前にだって分かるだろう?」
「それ、は……」
「おい魔物!いつまで少年を束縛しているつもりだ!!早く開放しろ!!」
「わーってるよ!うっせぇなぁ!!…そう言うことだ。ツナ。…じゃあな」
「や、だ…獄寺くん!」
「いいから…行け!!」
オレはツナの背中を思いっきり叩いて、村の方へと移動させる。ツナは渋々といった感じで、歩いていった。
――じゃあな、ツナ…
もう会うことも、ないだろう……
ツナはきっと、もうオレの所には来れないだろう。
オレは汚らわしい魔物として、村人に認識されてしまった。
そうなれば、潔癖症な村人はきっと、オレの住む村外れを禁忌の場所と指定するだろう。
そんな所に、ツナみたいな子供が来れるはずもない。
それ以前に、親や保護者がオレの所に来させるのを許さないだろう。
つまり、これがオレとツナの…最後の別れということだ。
オレはツナが見えなくなるまで見届けて、独り、ぽつりと呟いた。
「じゃあな…ツナ。久しぶりに、本当に久しぶりに――楽しかったよ…」
オレは踵を返して、あの場所へと戻っていく。
戻る途中、気まぐれに、ホントに気まぐれに、鎖を手と手に取って、引っ張り合ってみる。
――断ち切れない。
…空を見上げれば、そこには綺麗な月が輝いていて。
……月はいつまで経っても、相変わらずそこにいて。
――オレの鎖もいつまで経っても、立ち切れやしなくて。
それはもう、きっと永遠といって良いほどの永い年月で続いていて――
それはきっと…変わらない、それはきっと――真実とも言って良いだろう。
それはきっと、永遠という名の、真実――…
++++++++++
変わらない、真実。
前
戻