聖域への道
1ページ/全2ページ
キミに会いたい。逢いに行きたい。
けれど優しすぎるキミは、それを望まないようで――
――そろそろ、お前が何か行動をしているときだろうか。
…オレなんかに構わないでほしい。オレなんかに、負担なんか負わないでほしい。
だから。オレは精一杯の強がりと、願いを篭めて。
お前に、別れの歌を、送ろう。
「…それは、誠か?」
オレは、母に呼ばれた陰陽師と二人っきりで部屋にいた。
オレは掛けられてもいない呪いを解こうとする陰陽師に、半ば諦め半分に、彼のことを話した。
すると。意外にも、陰陽師はオレの話を信じてくれた。少なくとも、オレにはそう見えた。
「――本当です。オレは彼に呪いなんて掛けられてません。オレが無理を言って、彼を祭りに連れ出したんです」
「ふむ…それは悪いことをしたな。最近、隣村の魔物が悪さをしたので少々魔物に敏感になっていたようだ」
「…隣村の、魔物?」
「ああ。こいつがまた厄介な奴でな。こいつが回りに呪いを掛けまくっていた」
「…陰陽師さんは…陰陽師さんなんですよね?」
「そりゃあ。――それが?」
オレは、意を決して、彼に頭を下げた。
「お願いします…オレに、呪いを解く方法を、教えて下さい」
――そんな日なんて、来るのだろうか。
呪いが解ける日なんて…来るのだろうか。
それは。もう何度も自問したこと。
そして。それは考えても仕方のないこと。
…鎖は、確かに短くなってきている。今はこの左足首に巻かれているものだけだ。
昔は、違った。真っ赤で重い鎖が幾重にもオレを包み込んでいて。
重くて。痛くて。苦しくて。罪を知って。
――それが少しずつ、短くなってきたのは、一体いつからだっただろうか…
何が原因で、罪が軽くなっていったのだろうか。
分からない、解らない――
身じろぎする度に、鎖が軋んで。オレの罪が終わっていないことを知って。
――もう、ほとんど痛みはない。苦しみも。重みだって。
…長かった。永かった。ここに来るまで、沢山の人間と関わった。
それは、普通に過ごしてきたら取るに足らない程度の人数だろうけど。
でも。あの時からここにずっといるオレにとっては、それはまるで奇跡のような出逢い。
だって。こんな洞窟に一体誰が来よう?
来たとして。こんな魔物に、一体誰が好きこのんで関わるというのか。
――でも。あいつらは…
……。
オレは、その時を想い出し、そいつらを想い出し――
次
戻