泡沫の愛
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…これが起爆スイッチか?まったく、地震なんて大嘘吐きやがって。大方この洞窟を破壊して、魔物であるオレを殺そうって魂胆だろ?まったく面倒くせぇことしやがる。

こら、返せ!危ねぇだろーが!!

ああそうだな。危ないな。だからお前、ここから離れた方がいいぞ。

馬鹿、お前も出てから爆破するんだ!――外に出よう。外に出て、そこから呪いを解く方を見つけよう!

…なんで、オレの周りには良いヤツばかりがやってくるのかね。

おい、…おい!馬鹿な真似は寄せ!


オレは。生まれ来ること自体が罪なんだ。

罪は。何をしても罪なんだ。夢見ることさえ、罪なんだ。


そんな馬鹿な話しあってたまるか!お前は罪なんかじゃない!!


オレは、誰かと知り合ってはいけないんだ。きっと。弱いオレはお前らに甘えちまう。

オレは、罪なのに。罪を償わなくちゃいけないのに。なのに求めてしまうから。人というものを。


人が人を求めて何が悪い!そこから離れろ!オレがそんなつまらない牢なんかぶち壊して、お前を外に出す!

――分かんねぇ奴だな…オレは魔物だって。…罪だって。だから。これは言うなれば…そう。


報いって、奴かな…?


罪が、夢を見た、報い。

罪が、人を求めた、報い。

罪が、こいつと一緒にいたいなんて思った――報い。


じゃあな…金髪の兄ちゃん。

――上手く…避けろよ?


やめ――


「……」

ぼんやりと、意識が覚醒する。

…また懐かしい夢を見たなー…

あの後は、本当に何もなかった。

真っ暗な闇の中、オレはただひたすら、時の中にいた。

何もしなかった。…何も。

暗闇の中、ぼんやりと横になって過ごしていたか、夢も見ない眠りについているかの日々だった。

その生活に、ある日終止符が打たれて…

そこにやってきたのは、久しぶりの光と、紅葉と、そして――

――なぁツナ。

やっぱり、オレは魔物なんだ。

そして、オレは罪なんだ。

…お前は悪い魔物に見えないって、言ってくれたけど。

でも、魔物に良いも悪いもないんだ。

罪はどう足掻いたって悪いものであるように。

魔物も、どう足掻いたってそこから抜け出せないんだ。

だから。ツナ。

もう、オレの所に来るんじゃねぇぞ。

もう、オレなんかの所に来るんじゃねぇぞ。

もう、オレは見たくない。

オレなんかの為に、時を割くような奴を。

最初のあの馬鹿は、知り合ったあの日から、ずっとオレの所に来て、語ってくれた。

そいつにはそいつの生活もあったのに、オレなんかの為に時間を削って、命を落とした。

オレは怒った。オレなんかの為に命を落としやがってと。オレは怒った。

次のあの馬鹿は、オレにいろんなことを教えていった。

苦しいだろうに、痛いだろうに。そんな表情は欠片も見せなくて。そして死んだ。

オレは泣いた。もしかしたら本当に自分は呪いを出しているのではないかと。それでこいつは死んだのではないのかと。オレは泣いた。

最後の馬鹿は…オレを心配してくれた。オレを怒ってくれた。

洞窟が爆発して、オレが光も届かないような地中に潜っても。あいつはそこを離れようとはしなかった。そしてそいつはそこで息絶えた。

オレは苦しんだ。オレが殺したも同然だと。オレはそいつの名も知らず、そいつの名を呼ぶことすら出来ず、苦しんだ。

…オレはもう、見たくなかった。

オレなんかに、時間を、身を削るような馬鹿を。

…だから。ツナ。

お前は。お前だけは。オレの為に死なないでくれ。

お前は。お前だけは。オレのことなんか忘れて生きてくれ。

――頼むから。


++++++++++

どうか、お前だけは生き延びて。