涙
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「獄寺氏」
「ん?」
「大好きです」
「…知ってる」
「獄寺氏は?」
「ん?」
「獄寺氏は僕のこと――…好きですか?」
「…オレに言わせるつもりか?」
「ええ」
「…はぁ、ランボ。オレはお前のことが――…」
…いつもここで、目が覚める。
「………」
それは在りし日の記憶。
懐かしい…記憶。
もういない彼の―――…記憶。
「…獄寺氏」
呟くは彼の名前。
もういない彼の名前。
「獄寺氏」
ぎゅっと、自身の身体を抱きしめる。いつか彼がそうしてくれたように。
「…獄寺氏」
知らず涙が零れる。けれど慰めの手はない。
…いつも頭を撫でてくれた手は、もういない。
彼は死んでしまったから。
彼が死んで…もう、二年になるだろうか。
彼は仲間を守って死んだ。
銃弾の雨を何発も喰らって、血塗れになりながら。
それでも彼は、仲間を活路へと導く為に怒号を投げ飛ばしたらしい。
彼ほどの腕なら、怪我も最小限で逃げ出すことだって出来ただろうに。ああ、また涙。
彼の死はファミリー中を駆け巡って。同時に衝撃をも与えた。
表立って荒げる人も大勢いた。
特に何のリアクションも起こさなかった人もいるけど、けれど心の奥底では悲しんだと、信じたい。
だって彼は、誰からも愛されるような人だったから。
本当に…誰からも。
ぽろり。また涙。
ずっとずっと、初めて逢ったときから彼のことが大好きで。
(そりゃあ、初めの好きは今の好きとはまた別の種類だったけど)
…それでも、好きで。
だから、獄寺氏が僕を選んでくれたことが、何よりも嬉しくて。
…ああ、けれど。その結果がこんな結末だなんて。
こんなことなら、彼を好きにならなければよかったのだろうか。
初めから出会わなければよかったのだろうか。
時々そう思って、でも、その度に。
――ランボ――
彼との、獄寺氏との思い出が。駆け巡るように思い出されて。
…楽しかった思い出が、思い出されて。
「う…ぅう…っ」
好きにならなければよかっただなんて、とんでもない。
ましてや出会わなければよかっただなんて、考えられない。
だって、僕は。
オレは今でも。獄寺氏が好きだから。
二年の時が経った今でなお、彼のいない二年を味わって未だ。
…獄寺氏のことが、大好きだから。
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僕の慰めはあなたとの思い出のみ。
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