あなたを想うあまり
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それはある日の夜のこと。
『あ、もしもし10代目ですか?』
「うん。…本当に電話してきてくれたんだね。嬉しいよ」
『当たり前じゃないですか!10代目のためですから!!』
「うん、ありがとう」
今この国にいない彼からオレへ電話が届いた。
―――いつものように獄寺くんがイタリアに帰って。オレは一人日本に残って。
仕方ないって分かってるけど、それでも寂しいと感じてしまって。
そんなオレの心情を察してくれたのだろうか。
…オレ、毎日10代目に電話します!
旅立つ前に、獄寺くんはオレにそう言ってくれて。
そして本当に―――電話してきてくれて。
ああ、嬉しい。どうしよう、今凄い幸せな気分。
暫く他愛ない話をしていると。
『――‥―スモーキー、…――るつもりだ?』
イタリアと繋がっている携帯から、獄寺くん以外の声。…ってあれ?この声って…
『うっせーっ 今10代目と話してんだよオレは!邪魔するな!』
「…獄寺くん」
『…は、10代目!えっとオレ――』
「そこにいるのは――…もしかしなくても間違いなくディーノさん?」
あれあれ?何故だろう。なんだか我ながら物凄く声が冷たいぞ?
『えっとその…ってわっ』
獄寺くんの声が遠のいて。
『おーっすツナ!元気か?』
聞こえてきたのはやっぱりあの兄弟子ディーノさんの声だった。
「何でディーノさんがそこにいるんですか?」
『なんだツナやきもちかー?何でって、そりゃお前スモーキンと一緒にいたいからに決まってんだろー?』
働け。
「…獄寺くんに手を出しちゃいけませんよ?」
『おお怖ぇ。でもそれは約束出来ねぇな。欲しいものは奪うのがマフィアだぜ?』
なるほど。いいことを聞いた。今度実践してみよう。
「…まぁ、それはそれで置いといて。獄寺くんに代わって頂けます?」
『はいはいっと』
そうして今まで聞こえてきた声が途切れて。そしてまた聞こえてきた愛しい声。
『10代目すみません。跳ね馬の奴が無理矢理…』
「へぇ…そうなんだ」
あの金髪今度会ったら締めてやる。
「それで何の話だったっけ…」
話を思い出そうと、少しだけ口を閉じたら電話口の向こうからなにやらぐずついた子供の声が聞こえてきた。
「…?獄寺くん?どこから掛けてるの?他にも誰かいる?」
『あ、はい…――お‥―お前少…黙―……って、うわ!』
獄寺くんが向こうの誰かに話し掛けたと思ったら、何かに驚いたような声がして。そして次に聞こえてきたのは爆発音。
「ご、獄寺くん!?大丈夫!?返事して!!」
『は…っん……けほっ――は、はい10代目。大丈夫です…』
「あぁ、よかった…どうしたの?何があったの?」
『えっと…あ、こら――』
『やぁ若き10代目。ご機嫌麗しゅう』
「大人ランボ…」
そうか。さっきの爆発音は10年バズーカが。納得。
「…ていうか、なんでランボがそっちにいるのさ」
『どうやら子供のオレが獄寺さんに着いて行ってしまったようですね』
お前リボーン暗殺はどうした。
「――まぁ、大人ランボがどこにいようとどうでもいいや。獄寺くんに代わってよ」
『…若き10代目。言葉が痛くて冷たいです』
うん。だってオレ獄寺くんとの電話を楽しみにしてるんだもの。
『―――若き10代目。お言葉だとは思いますが』
「ん?」
『イタリアと日本との時差は8時間あります』
「え…」
『今ここが正午丁度ですから、そちらは夜の8時ですね…若き頃から獄寺さんは、随分とあなたに気を遣っている』
「………」
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