願う少年、叶えるマフィア
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マフィアには主人がいました。マフィアは主人が大好きでした。

マフィアはいつも主人を守ろうと奮闘していました。主人にとっては、少し迷惑に感じるんじゃないかと思わせるぐらい。

ある日、マフィアはいつものように主人を守っていました。

その日はいつもと違って。主人は本当に命を狙われていたのです。

でも、マフィアは主人を守り通しました。

マフィアは主人の無事を確認すると、倒れてしまいました。


「……続きは?」

「その扉の向こうに」


………。


オレはオレの家を見上げる。そしてそのまま話し掛ける。獄寺くんに。

「ね。獄寺くん」

「はい?」

「オレ、知ってるよ」

「え?」

「その話の続き――知ってるよ」

「………」


マフィアが倒れたあと、主人は激しく困惑しました。

だって、主人には命を狙われている自覚がまったくなかったからです。

いつも、マフィアがダイナマイトを投げるのをはらはらしながら見てたりするだけで。

だからその日も。いつものようにマフィアが何か勘違いをしたのだとばかり思っていたのです。


獄寺くん?

10、代目…お怪我は、ありませんか……?

ない、けど。でも、ごく…でらくんが……

よかっ……

獄寺くん?獄寺くんっ!?獄寺くん!!


事情を知った主人は、マフィアを医者の所に連れて行きました。

医者は手の限りを尽くしてくれましたが、マフィアは重症で。

医者は言いました。「朝まで持たない」と。

主人は泣きました。マフィアを想って泣きました。

主人は傷だらけのマフィアの手を取りながら眠りました。朝が来ることを呪いながら眠りました。


「…その話の続きは、どうなっているんですか?」

「多分、この扉の向こうに」

「それは残念です。結末が知りたかったのに」


………。


「ねぇ。獄寺くん」

「はい?」

「ここは……オレの夢の中なの?」

「……だと思います。理屈は、よく分かんないですけど」

「…じゃあ、この扉を開けたら、オレはどうなるの?」

「……きっと、夢から覚めます。それだけです」

「……起きたくないなぁ…」

「駄目ですよ10代目。みんな、きっと心配してます」

「分かってる。……冗談、だよ。でも」

「………でも?」

「オレが本気で、起きたくないって、言ったらどうする?」


オレがそう言うと獄寺くんは、少し考えて、笑って、言った。


「お願い、します」

「……お願い?」

「はい。お願いです」


――それは。夢に来たばかりのとき、オレが彼に聞いたこと。


―――ね。何かオレにお願いとか、ない?


「……反則」

「すいません」

「………分かったよ」


観念して、オレは扉に手を掛ける。

―――でも。


「……獄寺くん」

「はい?」


黙って帰るのは癪だから……


「夢ってさ…なんでも、自分の思い通りになるんだよね?」

「らしいですね」


オレは扉を開け放つ。


「じゃあさ、一つだけ、獄寺くんにお願い」

「………?」


オレは、振り返って、願いを―――