眠れぬ森の
14ページ/全15ページ


「リボーンさん、大丈夫ですか!?」

「…獄寺か」


意外に、しっかりとした声が返ってきた。

けれど身体は倒れたまま。見ればリボーンさんの額には汗が滲んでおり、苦しそうに見えた。


「なんだ…?ははあ、さては何か忘れ物でもしたか。まったく、お前はいつも最後の最後で気を抜かせる…」

「リボーンさん…」


口調だけなら、いつも通りとも言えるのに。

けれど今オレの目の前にいるリボーンさんはとても弱々しく見えた。

知らない。こんなリボーンさんをオレは知らない。


「もっと後で発見されたかったんだけどな。世の中ってのは上手くいかねぇ」

「何を…」


発見だなんて、そんな、そんな言い方、まるで……


「ああ、言い忘れていたがな、獄寺」


まるでなんでもないことを言うような声で、リボーンさんが。


「実は、オレはもう、長くないんだ」


そんなことを、告げる。


「どうして…」


オレの喉から掠れた声が出る。

リボーンさんが「お前のほうが死にそうだな」と笑った。


…どうして、そんな顔してるんですか。

なんで、そんな声が出るんですか。


「実はな、」

「え…?」


リボーンさんが声を出す。


「寝てないんだ」

「寝てないって…」

「寝たふりをして、お前が寝たあとすぐ起きた」

「………」

「お前らはまだまだ危なっかしくて見てられないからな。オレが付いててやらねーとって思って今まで踏ん張ってたんだが」

「リボーン、さん」

「でも、お前がオレの代わりが出来ると言ったからな。休むことにした」

「……………」

「いい加減、限界だったしな」

「…………………」

「休んでもいいか?」


なんて、あなたは事も無げに言い放つ。


こんな姿見せられて。

こんなこと言われて。


オレになんと言えというのですか。

駄目などと、言えるわけないじゃないですか。


「…もちろん、いいですとも」


震えた声で、オレは言う。


「言ったじゃないですか。伊達にリボーンさんの生徒をしていません。リボーンさんがいなくなったって―――」


声が出なくなる。

でもぐっと堪えて。


「リボーンさんがいなくなったって…オレたちはもう平気です」

「…そうか」


どこか安心したような、安らかなリボーンさんの声。


「なら、安心だな」

「ええ」

「じゃあ、オレはこれからサボることにする」

「ええ、どうぞ」

「じゃあ、その前に、最後に、獄寺」

「…はい」

「膝、貸せ」

「リボーンさん?」

「昼寝をする」

「―――」


寝る。

それは…つまり……


「オレの膝で、いいんですか?」

「今ここにお前しかいないからな。仕方ない」

「妥協ですか」

「その通りだ。ほら、さっさと膝貸せ」

「………はい」


リボーンさんはオレの膝に頭を載せる。

そして目を閉じる。


「じゃあな。獄寺」

「…はい」

「おやすみ」


………。


「…おやすみなさい、リボーンさん」