眠れぬ森の
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「リボーンさん、大丈夫ですか!?」
「…獄寺か」
意外に、しっかりとした声が返ってきた。
けれど身体は倒れたまま。見ればリボーンさんの額には汗が滲んでおり、苦しそうに見えた。
「なんだ…?ははあ、さては何か忘れ物でもしたか。まったく、お前はいつも最後の最後で気を抜かせる…」
「リボーンさん…」
口調だけなら、いつも通りとも言えるのに。
けれど今オレの目の前にいるリボーンさんはとても弱々しく見えた。
知らない。こんなリボーンさんをオレは知らない。
「もっと後で発見されたかったんだけどな。世の中ってのは上手くいかねぇ」
「何を…」
発見だなんて、そんな、そんな言い方、まるで……
「ああ、言い忘れていたがな、獄寺」
まるでなんでもないことを言うような声で、リボーンさんが。
「実は、オレはもう、長くないんだ」
そんなことを、告げる。
「どうして…」
オレの喉から掠れた声が出る。
リボーンさんが「お前のほうが死にそうだな」と笑った。
…どうして、そんな顔してるんですか。
なんで、そんな声が出るんですか。
「実はな、」
「え…?」
リボーンさんが声を出す。
「寝てないんだ」
「寝てないって…」
「寝たふりをして、お前が寝たあとすぐ起きた」
「………」
「お前らはまだまだ危なっかしくて見てられないからな。オレが付いててやらねーとって思って今まで踏ん張ってたんだが」
「リボーン、さん」
「でも、お前がオレの代わりが出来ると言ったからな。休むことにした」
「……………」
「いい加減、限界だったしな」
「…………………」
「休んでもいいか?」
なんて、あなたは事も無げに言い放つ。
こんな姿見せられて。
こんなこと言われて。
オレになんと言えというのですか。
駄目などと、言えるわけないじゃないですか。
「…もちろん、いいですとも」
震えた声で、オレは言う。
「言ったじゃないですか。伊達にリボーンさんの生徒をしていません。リボーンさんがいなくなったって―――」
声が出なくなる。
でもぐっと堪えて。
「リボーンさんがいなくなったって…オレたちはもう平気です」
「…そうか」
どこか安心したような、安らかなリボーンさんの声。
「なら、安心だな」
「ええ」
「じゃあ、オレはこれからサボることにする」
「ええ、どうぞ」
「じゃあ、その前に、最後に、獄寺」
「…はい」
「膝、貸せ」
「リボーンさん?」
「昼寝をする」
「―――」
寝る。
それは…つまり……
「オレの膝で、いいんですか?」
「今ここにお前しかいないからな。仕方ない」
「妥協ですか」
「その通りだ。ほら、さっさと膝貸せ」
「………はい」
リボーンさんはオレの膝に頭を載せる。
そして目を閉じる。
「じゃあな。獄寺」
「…はい」
「おやすみ」
………。
「…おやすみなさい、リボーンさん」
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