眠れぬ森の
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リボーンさんの部屋のドアが開いていた。電気が点けられており、そこだけ昼間と変わらぬ明るさを持っていた。

歩きながら室内を見ると、リボーンさんは椅子に座ってグラスを傾けていた。晩酌か。そうか。

一人の時間を邪魔してはいけないと思い、視線を通路に戻し通り過ぎようとする。が…


「ん?獄寺じゃないか」


声を掛けられた。

予想外だった。てっきり見送られると思ったのに。


「なんだ、まだ仕事か?」

「いえ、今終わったところで…」

「そうか。なら付き合え」


オレは耳を疑った。なんだって?この人は今なんて言った?付き合え?オレと?何に?晩酌に?

あまりの出来事に思わず硬直してしまったオレを見て、リボーンさんは小さく声を吐く。


「嫌か?まぁ、それなら別に…」

「い…いえ!!是非お付き合いさせて下さい!!」


オレはリボーンさんの言葉を遮り思わずそう言っていた。

それはリボーンさんのお誘いを断わるなんて無礼な真似が出来るわけない、という思いもあったし、

有り得ないことなのだが…それなら別にと言うリボーンさんの声色が、どこか寂しげに聞こえてしまったこともあった。いや、むしろそれが大半の理由だ。

リボーンさんは急に大声を出したオレに驚いたように少し目を開かせていたが、やがて笑って、グラスをもう一つ取り出した。

オレは今更ながらに冷静になってきて、少し恥ずかしくなっていた。夜中に大声を出して、リボーンさんの声を遮って、しかもリボーンさんの声が寂しそう、なんて思ったりして。

ないない。絶対にない。この人が寂しがるなんて有り得ない。仮にあるとしてもその対象がオレにだなんてありっこない。どうやら今日のオレは相当疲れているようだ。


「どうした?」

「いえ、なんでもないです」


まったく、自意識過剰にも程がある。せめてこれがリボーンさんに伝わらぬようせねば。

そう思いながら、オレはリボーンさんの部屋へ足を踏み入れた。