眠れぬ森の
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思わず固まってしまった。リボーンさんは笑ったままだ。
別にやましいことなどないはずなのに、何故か気不味く感じる。
というか完全に不意打ちだった。まさかリボーンさんは大丈夫だ、と再確認したところで言われるなんて。
「いえ、その、」
「ん?」
言葉に詰まる。しかし所詮オレがリボーンさんに隠し事など出来るはずがないんだ。しかも本人の目の前でなんて無理に決まってる。
観念して、オレはぽつりぽつりと訳を話した。しかしなんだか、妙に気恥ずかしい。
リボーンさんは黙って聞いていた。そして、オレの話が終わるとまた笑って、
「なんだ、お前はオレより骸の話を信じたのか?」
と言ってのけた。
リボーンさんの顔が意地悪な笑みになっていたから、冗談だというのは分かっていたけど慌てて反論せずにはいられない。
「ち、違います、そうじゃなくて…!!骸の話なんてもちろん信じちゃいませんけど、でも!!」
ああ、もう全然思った通りに話せない。こんなんで10代目の右腕してるんだから笑えてしょうがない。
と、クックと含み笑いが聞こえた。リボーンさんの声で、リボーンさんの口から。
「本当にお前はからかい甲斐があるな」
「…リボーンさんー…」
悪い悪いと言いながら、リボーンさんはオレのグラスにワインを注いでくれた。いや、別にねだったわけじゃないんですけど。
「オレはそんなに弱々しく見えるか?」
「そういうわけじゃ…」
そういうわけじゃない。そんなわけじゃない。
ただ、悔しいが骸の言う通り、オレはリボーンさんのことを何も知らない。特に呪いに関しては、聞いても誰も答えてくれない。
不安にならない、と言えば嘘になる。リボーンさんの異様なまでの強さ、冷静さ、知識の量。
それと引き替えにリボーンさんは何を差し出したのか。時折耳にする呪いの情報の断片。不吉な感情が拭えない。
「教え子に心配されるとは、オレもまだまだだな」
「いえ、その…すいません、過ぎた真似を…」
「いや、それは別に構わんが。…それで、オレを観察した結果はどうだ?オレは死にそうか?」
「いえ…骸のデマだということがよく分かりました。リボーンさんはいつも通りです」
「そうか」
リボーンさんが満足気に笑い、ワインを呷る。
…これほどワインが似合う10歳もリボーンさんぐらいだろうな…
「ん?なんだ?どうした?」
「い、いえっ………そういえばリボーンさん、随分遅くまで起きているんですね」
思ってたことを悟られぬよう目を逸らしながら適当に言葉を吐く。しかし実際気になっていたことでもあった。
オレはこんな時間まで掛かったが、リボーンさんの仕事はとっくに終わっていたはずだ。
それともこんなに旨いワインを飲んでるぐらいだから、何かいいことでもあったのだろうか。
「オレか?オレはいつだって起きてるぞ?」
オレをからかうように、茶化しながら答えるリボーンさん。
「そうですね…本当、リボーンさんがいつ寝ているのか分かりません」
「だから、ずっと起きてるんだ。オレは」
…?
事も無げに、当たり前のようにそう答えるリボーンさん。
リボーンさんがオレを見て笑う。
「骸の言っていたことだが、それは別に間違っちゃいないぞ」
「え…?」
一瞬で酔いが醒めた。思わずリボーンさんを見返し、目が合う。
「実はオレは、寝たら死ぬんだ」
「何を…」
「それに最近、身体にもガタが来ている」
「そんな…」
骸の言ってた台詞が蘇る。
アルコバレーノ、そろそろ長くないですよ。
あなたは彼のことをどれだけ知っているというのですか?
呪われし赤ん坊。むしろ今まで生きてこれたのが奇跡と言ってもいいのですよ?
温度が下がる。寒くなる。
だって、リボーンさん、そんな…
リボーンさんは少し俯いた。表情が見えなくなるが、すぐに顔を上げた。何故かしてやったりな顔をしてた。
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