眠り病
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「お前も物好きだな」

「そうですか?」


リボーンがアジトを歩く。その隣を松葉杖を床に突きながら歩くのは獄寺隼人。


「怪我人は大人しく寝とけ」

「病人も安静にしておいた方がいいのでは?」

「誰が病人だ。検査の結果はお前も聞いただろ」

「聞きはしましたけど…」


問題がないはずなのに問題が起きているのなら、そっちの方がよっぽど問題だろう。だからこそ周りもこうして過保護と思われるほどリボーンを心配する。


「オレは大丈夫だっつってんのに」

「あはは…」


…もう一つ、周りがリボーンを心配する理由を上げるならば、このリボーンの楽観だろう。

最強であるが故の驕りだろうか、リボーンは自身に関する危機感が薄い。自分よりも周りを気に掛ける。

確かにリボーンは強く、よくフォローしてもらいよく助けられた。

けれどそれも昔の話、呪われていた頃の話だ。

呪いは10年前に解け、その残滓もいい加減なくなっただろう。つまり、リボーンは今尋常じゃない知識と経験を持ってるだけのただの少年なのだ。

体力もスタミナも年相応。疲れもするし病気だって掛かるだろう。

そこのところを、本人は自覚してないようだが。

ともあれ、そうしてみんなを守ってきたリボーンだ。

その恩をここで少しでも返せるのなら、気合を入れて返そう。

獄寺は静かに気を張った。


「急に休みって言われてもな。一体何をすればいいのやら」

「リボーンさん、よくサボってるじゃないですか」

「サボるのは仕事中だからいいんだよ」


なんとなく学生時代を思い出し、獄寺は「分かる気がします」と返した。


気合を入れる獄寺と、気楽に構えるリボーン。

どちらが正しいのかはともかく、リボーンは倒れることなくいつも通りで。

むしろ慣れぬ松葉杖に獄寺が助けられることも多く、獄寺は軽く自己嫌悪に陥ったり。リボーンに笑われたり。

己の存在意義に疑問を持ち落ち込む獄寺に、リボーンは暇だから話し相手になれと言ったり、来るなら来いと外出に付き合わせたり。

リボーンの付き添いのはずが、何故か付き添われているような図になってしまった。

結局、獄寺が松葉杖を必要としなくなってもリボーンが倒れる日はなかった。