眠り病
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獄寺が目を開けると、そこは休憩室で。

纏まらない思考と、霞掛かった視界の中暫し動けず、何も出来ない。

身体が重い。肉体が休息を求めている。この程度の睡眠では足りないと言っている。

その声に納得し、頷き…また目蓋を下ろそうとする。眠りにつこうとする。

ああ、でも、どうして自分はこんなところで寝ているんだっけ。

自分は、確か……

思って、思い出して、獄寺は勢いよく起き上がった。


「リボーンさん…!!」


獄寺は急いでリボーンの病室へと向かった。


リボーンが大きな音を立てて扉を開け入ってきた獄寺を見る。少し意外そうな顔をした。


「思ったより早く起きたな」


そう言うリボーンの言葉を、獄寺は聞いていなかった。

ただ無事なリボーンの姿を確認して…安心し、へたり込む。


「まだ疲れてるだろ。休め」

「い、いえ…大丈夫です。十分休みました…」


そう言う獄寺の顔色は悪い。起き上がるのにも一苦労している。


「そんな状態で、今この場を襲われたらどうするつもりだ?オレにお前を守らせるつもりか?」

「いえ…ご安心を……リボーンさんは、オレが命に代えても守りますから…」


また眠らせてやろうかこの馬鹿。とリボーンは思った。

思ったが、留まる。代わりに、


「獄寺」


その名を呼ぶ。

呼ばれた獄寺はリボーンの顔を見て、立ち上がり、近付く。


「何でしょう」


リボーンは己の腰掛けるベッドの隣を指差し、


「座れ」

「え?」

「座れ」


投げられた疑問符に、同じ言葉を返す。

獄寺はおずおずとしながらも、


「し、失礼します…」


と言って、リボーンの隣に座った。


(痩せたな…)


ちらりと獄寺を一瞥して、リボーンはそんな感想を抱く。

そうさせたのは自分だ。自分が不甲斐ないから周りに、獄寺に負担がいっている。


「…獄寺」

「は、はいっ!?」


小さく呼び掛ければ、少し緊張した獄寺の声が響く。


「あーっと…」


獄寺の方を向き、しかし気まずげに頭を掻く。

獄寺といえば何を言われるのだろうと緊張した面持ちでビクビクしている。

リボーンはただ、世話をしてくれた…心配してくれた礼を言いたいだけなのだが。

言おうと決めて、獄寺を隣まで呼んだまできたのに…そこから先へ進めない。

照れくさい、と言えば何を今更と呆れられるだろうか。しかしそれが本音だ。

とはいえ、先延ばしにも出来ない。時間がない。今言うか、二度と言わないかだ。

小さく息を吐き、意を決し、獄寺の目を見ようとして―――