眠り病
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次の瞬間、リボーンは確かに獄寺の目を見たが、

何故か自分はベッドに横たわっていて、

何故か獄寺はベッド隣の椅子に…やけに疲れた表情で座っていた。

一瞬前と違う状況。これはもう慣れた現象だ。

折角決意したのに、嫌なタイミングで寝ちまったものだと思いつつリボーンは身を起こし、獄寺に問う。


「オレはまた寝てたのか。今度はどれくらい寝てた?」

「……っ」


獄寺は言葉に詰まった。

リボーンは黙って獄寺を見ている。質問の答えを待っている。

獄寺は疲れた表情を緊張させる。青褪めさせる。

その様子を見ながらリボーンは自分が眠っていた時間を計る。獄寺の憔悴具合からして一ヶ月とは言わないまでも…


「さ……」


獄寺が小さく呟く。顔を俯かせ、目が前髪で隠れる。


「三週間…です……」

「……そうか」


とうとう眠るまでの時間よりも眠る時間の方が長くなった。寝たきりになるのも時間の問題か。


なら、起きていられる内に姿を消すか。


どこに隠れたところでもう目覚めることはなく死体となるのだろうが、仕方ない。

この症状を自覚したときから決めていた。原因が分からぬまま、眠る時間が起きてる時間を超えたら終わりにしようと。

いずれ眠り死ぬだろうと覚悟をしつつも周りが伸ばしてくれた手を掴んでいたが…このときが来た。もう潮時だ。

そうなる前に獄寺にせめて礼の一つも言いたかったが…言う前に眠ってしまい、今言ったなら何かを察して引き止めにあう気がする。


(こいつは変な所で勘が鋭いからな…)


隙を見て抜け出す計画を立てるリボーン。と、ふと肌に感じる気配。とりあえず懐を探る。…何もなし。ベッド隣の机の引き出しを開けてみる。愛用の銃を発見。


「…リボーンさん…?」


疲れている獄寺はこの気配に気付いてないようだ。それとも周りの目を盗んでいるぐらいだから向こうがそれほど手練なだけか。

まあ、自分の最後の舞台なのだから多少は腕が立ってほしいものだが。


「お前は寝ていろ、獄寺」


そう言ってもなお意識を途切れさせまいとしている獄寺の頭をベッドに寄せ、目蓋を閉じさせる。

身じろぎし、僅かな抵抗を見せる獄寺。しかしすぐに力が抜け、気を失うように眠った。

気配はもうすぐそこまで。さて、上手くやらねば。

この時間に来るということは見回りは暫く来ないだろうと判断したんだろうが、騒ぎが起これば当然周りは気付く。

そうなれば周りは今より更に"厳重"で"安全"な施設に移動され…これ以上は考えたくない。

それを避けるための一番手っ取り早い方法。


ここで死ぬ。奴に殺される。無論奴も殺すが自分も死ぬ。